アキカイバースデー

ガリ、という音と共に唇に痛みが走る。
思わず離れれば彼が勝ち誇ったそれでこちらを見ていた。
流れる血に、『アキラ』は表情を歪める。
「…血は嫌いなんだけど」
「そりゃ。…わざとでェ」
キレイな微笑みをカイコクは見せた。
誰にも内情を明かさないような…そんな笑みで。
「誕生日なんだけどなぁ、俺」
「…。…どーだか」
こちらも綺麗に微笑んで見せればカイコクはツン、とそっぽを向いた。
どういう意味だろうかと目を瞬かせていれば彼がこちらを睨む。
「嘘だらけのお前さんのことでぇ、誕生日だって…」
「…嘘じゃあありませんよ?本当の事を言ってないだけです」
「…」
あの時と同じ笑みで微笑む『アキラ』に、カイコクが嫌な顔をした。
何故カイコクは『アキラ』が嫌いなのだろう。
『アカツキ』、とそう変わらないだろうに!!
「…で?カイコクさんは俺を祝ってくれないの」
「祝う義理はねェからな」
「俺だって仲間だったのに」
「俺の仲間は『入出アカツキ』だ、お前さんじゃねぇ」
心が篭ってない笑顔の応酬。
くだらないにも程がある。
「おめでとうの5文字だよ?…それも言えない?」
「…おめでとう、そして死ね」
煽る『アキラ』にカイコクはとびきりの笑みを見せた。
まったく、彼は人を挑発するのがうまいのだから!
「ありがとう、カイコクさん。じゃあプレゼントを貰いますね」
「…は?おい待てくそっ!!ぅ、ぁ、んんぅ!」
どさりとカイコクを押し倒し、無理やり唇を奪う。
今度は抵抗されないように、深く。

嘘で固めた『アキラ』の、唯一の【本当】は…白い部屋の中に霧散して…消えた。


(ねぇ、今日は何の日?)


(今日は…ー)

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