ヴァレンシュタイン×ナイトメア・ファンテール←将聖の白魔導士(鳩彼?SSS

「坂咲君」
「・・・はい」
傍らに跪いていた坂咲君に声をかけると、彼はこちらを向いた。
私を見上げる彼の、明るいブルーの眸に光はない。
何時もなら挑戦的に笑い、力強く前を向くそれには私しか映っていなかった。
それを見、ああ、彼は私の下に堕ちたのだと実感する。
「ヴァレンシュタイン!!!」
・・・突如、勇ましい声が響いた。
美しい銀の髪を乱し、息を切らせて駆け込んできたのは、将聖の白魔導師・・・銀朔夜。
彼の・・・坂咲君が私に服従してまでも護りたかった、大切な弟だ。
「・・・ようこそ。聖獣も連れずに敵陣飛び込むとは貴族のご嫡男の考えというものは凡人には理解出来かねますね」
「煩い!さっさと坂咲を返せ、ヴァレンシュタイン!!!」
笑みを浮かべて言えば、銀君は私のそれを一蹴し杖を向けた。
「・・・」
ふと、跪いていた坂咲君が立ち上がる。
躊躇う事なく剣を抜き、銀君に突き付けた。
「・・・なっ」
彼のその行動は少なくとも銀君を動揺させたらしい。
それはそうだろう。
・・・彼が銀君に愛情以外を・・・それも明らかな敵意を向けたのだから。
「・・・。・・・それが貴様の答えか、坂咲」
「・・・ああ」
感情を抑えた銀君の問いに坂咲君が淀見なく答える。
その声に生気はない、しかし一片の迷いすらも存在しなかった。
「・・・ヴァレンシュタイン、貴様坂咲に何をした・・・っ!!!」
「私は何も」
笑いながら言うと「ふざけるな!!」と銀君が怒鳴る。
ぎゅっと杖を持ち直し、銀君は坂咲君に向き直った。
「・・・っ、戻ってこい、坂咲っ!!」
「・・・。・・・俺は、ヴァレンシュタインのものだからね」
銀君の心からの叫びにも坂咲君は揺らがない。
自分の意思ではなくともそれが彼が出した答え。
・・・そうだ、彼は私のものだ。




「坂咲君」
「・・・はい」
立ち上がり、坂咲君を呼ぶ。
私の声に順応に振り向く彼をこれ見よがしに抱き寄せた。
ぼんやりとこちらを見つめる銀君にニヤリと笑い、坂咲君に囁く。
「・・・はい」
それに頷き、再び彼は私の前に跪いた。



私がゆっくりと手を出す。
その手に彼が口付けた。


「・・・貴方には期待していますよ」


薄く笑いながら彼の頬をそっと撫ぜる。
どのような理由があろうと、彼は私のもの。




そうでしょう?

・・・私の愛しの騎士。

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