とある、8月も秋に近づいた…ある日。


「レンってばまたそれやってるの?好きだねぇ」
ひょいとレンのそれを覗き込んでKAITOが笑う。
ソファ寝転んでいたレンは、自分たちがモデルになったリズムゲームをプレイしていた。
最初はモデルだから、とやっていただけだったが、だんだんハマってしまったのである。
…セカイ毎にKAITOのモデルがいるのがまた、良い。
「…んー、なんだかんだ良いんだよな…」
「何、それ」
本人にそれを伝えるのもまた憚られ曖昧に濁すレンにKAITOがまた笑った。
程々にね、と言う彼に生返事をしながらガチャを回す。
うちの初音ミク、とは違う如何にも電子の歌姫然とした初音ミクが紫に光る石を持ってきた。
がば、と起き上がり、兄の元に走る。
「兄さん!!気が弱いおれの新カードが出た!」
「…レンって何気に豪運だよね」
ほら!と画面を見せると何事かと思った、と笑いながらそう言ってくれた。
画面には現イベントの新しいカードである鏡音レンが映っている。
それにしても、とKAITOが何かを言いかけた。
「?どうしたん?」
「いや…。セカイによってレンの性格全然違うなあって思って」
「あー…まあなぁ」
兄のそれにレンも同意する。
同じ鏡音レンから出たのに6人とも自分とは全然違ったからだ。
「でも、他のおれたちが出てるゲームとも、でかいイベント出てるおれたちとも性格違うじゃん。何だっけ、十人十色?」
「まあ…ねぇ……?」
レンのそれに少し考えながらKAITOが頷く。
「兄さんも全然性格違うし。ま、おれはおれの兄さんが一番好きだけどな」
「えっ」
「?なんか変なこと言った?」
びっくりして目を丸くするKAITOにキョトンとしてしまった。
レンにとっては当たり前だから。
「おれは、何百人『KAITO』がいて、全員同じ服着てても、兄さんの手を取る自信あるよ」
「…もう……」
レンのそれにKAITOが笑う。
まるでそれはプロポーズのようで。
「レンなら本当に見つけてくれそうだねぇ」
「だろ?」
眩しそうに綺麗な青の瞳を眇める兄に、レンは笑いかける。



ネットの海に広がる青のように無限にいたとして


自分が愛したKAITOは、一人だけ




(自分の隣で笑う、このKAITOだけなのです!)



「…じゃあ、こないだガチャで出たブルームフェスのKAITO衣装着る約束はなしで…」
「…それとこれとは話が違うじゃん…っ!!!」

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