「…ふむ、どうするか…」
「…なんスか、また悩んでんスか」
「…あれ?昨日の夜決めたって言ってなかった?」
「…その後咲希に意見求めたら余計に分からなくなったみたい…」
「…おやおや」

類が4人のあれそれを聞きながらくすくす笑う。
眉を寄せて悩むのが司、呆れた顔が彰人、首を傾げたのが寧々、なぜだか罰が悪そうなのが志歩だ。
何をこんなに悩んでいるのか。
それは司たちが所属するワンダーランズ×ショウタイムが毎年公演する天使の日のショーに起因していた。
今年の『天使の日スペシャルステージ』を最終回として一区切りする、と打ち出したのは良かったのだ。
だが、最後ということで、何をメインにするかをまたも悩んでいるのである。
「うむ…。昨日はあれが最善だ!と思ったのだがなぁ…」
司が宙を仰ぐ。
彼らに取っても大切な公演だ、妥協はしたくないというのが本当のところだ。
「すまん、彰人!志歩!2人は関係者ではないが一緒に考えてほしい!!」
「…るせっ…。…まあ、冬弥も楽しみにしてますし?しゃーねぇッスね」
「…流石にこの流れで嫌ですとは言えないでしょ。…手伝いますよ。桐谷さんも楽しみだって言ってたし」
「ありがとう二人とも!助かる!!!」
「…司、うるさい!…ありがとう、日野森さん、東雲くん」
いつもの大きな声を出す司に一喝した寧々がペコリと、頭を下げる。
「えむが確認に行ってくれてるとはいえ…早く決めなきゃだもんね。白石さんも待ってるって言ってくれたし」
「そうだねぇ。待ってくれている3人の為にも早く決めないとね」
類がくすくす笑った。
「そうだな。…さて、どうするか…」
「いっそ新しい世界観にするのはどうッスか、…天使とゾンビとか」
「いや、迷走しすぎでしょ。…まあハロウィンならいいかもだけど」 
「最終回にゾンビはちょっと…。…面白いけど」
「ふむ…」
わいわいと話す4人に類が何か考え込む。
「…おい、類?」
「天使とゾンビ…相容れない2者の対立…荒廃した地上で、最後の戦いが始まる…!」
「…おーい、類ー?戻って来いー?」
ひらひらと司が手を振った。
「…そう聞くとちょっと面白そうかも…」
「志歩まで類の味方か?!」
「冗談ですよ」
くす、と笑う。
流石にそれは集大成としてどうかと思う…スピンオフなら見てみたくはあるが。
「…なら、全員集合はどうでしょうか?」
「え…」
「天使たちと、騎士と王子と魔術師と悪魔とそれから歌姫。みんな集合するのは熱いと思いませんか?」 
「冬弥!それに桐谷!」
にこにことやってくる青髪の二人の横を、夜空のような長い髪を靡かせた少女が走ってくる。
「草薙さぁん!!ぜっったい止めてね、ゾンビ!!」
「わっ、白石さん!!」
抱き着く杏を寧々が抱き止め、大丈夫だよ、と笑った。
「ゾンビが来てもちゃんと守るから」
「…!草薙さぁん…っ!」
「…楽しそうだな、あいつら」
何故か盛り上がる寧々と杏に呆れた顔を見せるのは彰人だ。
「彰人は護ってはくれないのか?」
「…あ?ゾンビからか?…そうだな…」
冬弥のそれに彰人は考えてからにやりと笑う。
「センパイたちに任せて冬弥と逃げる」
「何ぃ?!」
「おや、東雲くんは戦わないのかい?」
「いやぁ、一番後輩なんで。センパイがたの戦いを見させていただきますよ」
「…何だかんだあっちも盛り上がってるじゃん」
驚く司、煽る類にニヤリと笑う彰人、眉を寄せる冬弥…まあまあいつもの光景に、志歩は息を吐いた。
「日野森さんは?」
「え?」
「私を護ってくれる?」
「まあそりゃ…。…でも桐谷さんは大人しく護られてくれないでしょ」
「そんなことないよ?…多分」
くす、と笑う遥に、そういうとこだよ、と志歩も笑う。





どうやら、今年の演目も無事決まりそうだ。

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