プロフィール

桜井えさと(成人済み)
受けは総受け傾向、リバが地雷
作品傾向はほのぼのか闇が深いかの両極端

サイトべったー支部・つなびぃ(此処)

Twitter/ワンドロ&連絡垢表垢裏垢隔離垢




此処に上げている小話のCP→
鋼(エドロイ・ハボロイ)
鰤(イチウリ)
鳩彼(岩坂・朔優)
ボカロ(レンカイ/がくキヨ/ミクルカ/グミリリ*モジュレンカイ・モジュカイカイ/モジュルカ受け/KAIKO受け(クオイコ)あり)
刀らぶ(へし燭/安清/くにちょぎ)
フラハイ(レイロナ/ザーイス/テドセイ・アルセイ)
ナカゲノ(ザクカイ/ヒノシン)
エンドロ(ラセタバ)
プロセカ(彰冬・司冬・類冬/しほはる)

他にも細々



同人誌
ボカロ系
刀らぶ系

Voi che sapete

恋心


何やら冬弥が悩んでいるらしい。
本人から聞いたわけではない、ただ見ていれば分かる、といったところだ。
冬弥は表情変化も乏しく、何を考えているか分からない事もあったが…最近はめっきりよく分かるようになってきた。
これも相棒として歌を重ねてきたからだろうか。
「…?彰人?」
「おう、どうした?」
ふわりと彼の綺麗な髪が揺れる。
灰の目の奥には僅かな疑問が浮かんでいた。
「…。…いや、何でもない」
「別に、気になることがあれば何でも言やぁいいだろ」
「…!」
冬弥が驚いた顔をする。
何故分かるのか、とでも言いたげだ。
大体分かる、と肩を竦めれば、そんなものか、と彼は目線を落とした。
「…彰人は、誰かを見ているとぎゅっと心を鷲掴みにされたり、その人のことを考えると長い小説を読んだ後のように眠れなくなったりすることはあるだろうか?」
「…。…は?」
唐突に繰り出される疑問に思わずぽかんとしてしまう。
「…お前、それ…」
「…。…俺は、彰人を見ているとその様な気持ちになる。ざわざわするというか…確かに高揚もするがそれだけでもないし、言語化するのは難しいのだが…」
「…。…それを本人に聞くのかよ…」
「あまりにも行き詰まってしまったからな。先輩方やミクたちにも聞いたのだが、特に解決策はなく、オススメの曲を教えてくれるばかりで…」
困った顔の冬弥がiPodのプレイリストを見せてきた。
クラシック畑一筋で、ストリート音楽に身を置くようになった冬弥にはあまり縁がないのでは、と思えるラインナップが並ぶ。
「それで、彰人はどうだろうか?」
ちらりと冬弥を見れば、彼は珍しく眉を顰めて彰人を見ていた。
困惑しているような、縋るような、そんな。
だから思わず苦笑して、彰人は数少ない引き出しからピックアップした曲を冬弥に共有する。
彼を想う時に聴いている、なんて教えてやる気はないが…きっとこの気持ちに気付けば何れ分かるだろう、なんて希望観測も乗せて。
「…彰人?」
「…あー…。…オレもオススメ教えてやるよ。後、それいっぱいなるまで色んな奴に聞いて曲聴くのがいいんじゃねぇか?」




「うーん…。あっ、そうだ!この前教えてもらったこの曲、すごく良いんだ。良かったら聴いてみて?」

「えー、いいじゃーん!えっと、待ってね…確かこの曲がオススメでぇ…」

「あー…。じゃあ、この曲を聴くと良いんじゃない?ミュージカルの曲なんだけど、オススメ」

「ボクにも紹介させてよー!うちのサークルとはジャンルは違うけど、このアニメの主題歌がめちゃんこ良くてさぁ!」

「とーやくん、曲探してるの?!アタシ、オススメの曲いっっぱいあるんだぁ!」



「…増えたな」
「……そうだな?」
呆れる彰人に冬弥が小さく笑う。
あれから数週間しか経っていないが、と頭を掻いた。
確かに色んな人に聞いて曲を聴くと良いとは言ったが…想像以上に増えている気がする。
心なしか嬉しそうで、彰人は彼が良いならまあいいか、と息を吐いた。
…色んな人にバレている気がするが、まあ今更ではあるし…別にこの関係が壊れるわけではないし。
「んで?分かったのか?」
「…ぼちぼち、と言ったところだ」
尋ねる彰人に、冬弥は目を細めた。
それに、そうかよ、と軽く答える。
教えられた曲たちは冬弥の気持ちに名前を付けた。
恐らく彰人の気持ちにも。
口に出すことはない、そのメロディは二人の耳に入って消えた。




「…冬弥」
「…!彰人」
ベンチに座って何やら聞いていた彼に影を落とせば、見上げた冬弥がふわ、と微笑む。
「…用事、終わったのか」
「おう、待たせたな。…ってか、それ」
イヤホンを外し、カバンにしまいかけるそれを、彰人は指差した。
僅かに首を傾げた冬弥が、ああ、と微笑む。
あの時より格段に柔らかく、分かりやすくなったそれで。
「あの時より増えたぞ。…一緒に聴くか?」
ふふ、と楽しそうな笑みになんだか悔しくなる。
ただ、別に良い、と答えるのも悔しいから手を差し出した。
再び取り出したiPodにはたくさんの曲名が並んでいる。
「なんつーか…すげぇな」
「ああ。たくさんのジャンルの曲を聴くことが出来て俺も嬉しい。…オススメは…そうだな、最近フォトコンテストで協力してくれた人から教えてもらった曲がとても良かった」
「…まあ、あの人本業みたいなもんだしな……」
言われた曲を紹介したのは、彰人も良く知ったグループの彼女で。
「そうだな。…後は…ああ、そうだ。これも…」
彼の指がスイスイとiPodを辿る。
ベースが強めの、バンドサウンドが耳を擽った。
確かに良いな、と思っていれば楽しそうに肩を揺らす彼が目の端に映る。
「?んだよ」
「いや?」
「はぁ?気になるだろーが」
イヤホンを外してがしりと肩を組めば、わ、と声を漏らした冬弥は笑みを作った。
「…当時分からなかった、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歌曲(アリア)も、今なら分かる気がしただけだ」
何やら機嫌が良いらしい彼に、何だか心を揺さぶられ、触れるだけのキスを落とす。


長く共にいればいるほど、この曲名のない強い想いは輝きを増していくのだろう。

彰人たちの想いは名を越えてセカイを作った。

なら、この気持ちに、名前が付くなら、…セカイを作るのなら……きっと。

誕生日

「最近、音ゲー増えましたよねぇ」
俺のそんな言葉に、カイコクさんが胡乱げな目を向けた。
「…。…なんでェ、急に」
「いや、前々から思ってたんですよ。最近音ゲー増えたなって!」
ずい、と顔を近付けて力説すればカイコクさんはほんの少しだけ迷惑そうな顔をする。
露骨に嫌な顔をしないだけ優しいですよね、カイコクさんは!
「つぅか、前からあったろ」
「最近頓に増えた気がしません?」
「増えたっつぅか、ジャンルの母体がでかいやつが出てきただけだな」
俺のそれにカイコクさんはふむ、と真剣に考えてくれた。
意外とそういうトコ真面目なんですよねぇ。
「…それは…否定しませんね……」
「しねェのかい」
くすくすとカイコクさんが笑う。
ふわふわと綺麗な黒髪が揺れた。
こうやって笑うと少し幼く見えるのが不思議だ。
「カイコクさんもアイドルやってましたもんね、中の人が」
「そりゃあお前さんもだろ」
「ナカノヒトゲノムだけにですか?!」
「上手くねェし、メタ発言は嫌われんぜ」
わくわくする俺の言葉ににやりと笑う。
あ、いつものカイコクさんに戻りましたね。
でも俺はいつものカイコクさんも好きです!
「それは、カイコクさんに、ですか?」
首を傾げればカイコクさんも少しだけ首を傾けた。
「…。…さぁなァ?」
ちょっと考えてからカイコクさんは笑ってみせる。
自分の気持ちを隠してしまうのはカイコクさんの悪いところですよね、本当に!
「じゃあ好きですか?」
「まあ、好きか嫌いかで言やぁ前者だろうが…」
「えー。言葉で言ってくれないんですか?」
頬を膨らませる俺にもカイコクさんは素知らぬ顔だ。
まあそんな簡単だとは思わなかったですけどね!
「俺にも愛してるって言ってくださいよぉ」
「なんでそうなる…っていうか勝手にグレードが上がって……」
「歌ではあんなに言ってくれるじゃないですか!」
「そりゃあ歌詞の話だ。しかも歌ってるのは俺じゃねェし」
ぷい、とカイコクさんがそっぽを向いた。
…ありゃ、ご機嫌損ねちゃいましたかね?
いや、あれは…。
「…。…ま、バースデーソングなら、歌ってやっても、いいぜ?」
何か企んでると思ったら、そんなことを言う。
楽しそうなんですから、もう!
って、あれ?
「バースデーソング…?」
「?お前さん、誕生日だろう?」
首を傾げる俺に、カイコクさんはきょとんとする。
…あ。
「…。…本当に忘れてたな?」
「えへへ…」 
呆れたようなカイコクさんに、俺は笑ってみせた。
いやぁ、忘れがちですよねぇ、自分の誕生日!
「じゃあ、カイコクさんが忘れられない誕生日にしてください!」
「…ったく。調子良いなァ、入出は」
楽しそうに笑ったカイコクさんが可愛い。
俺は、カイコクさんのこういうところが…。


「…好き、なんですよねぇ」
「…はぁ?」
カイコクさんが嫌そうな顔をする。
あんなに優しかった人はどこに行ってしまったんだか。
「俺、カイコクさんのこと好きですよ」
「…。…俺ァ嫌いだがな」
ふい、と目線を逸らそうとするカイコクさんを、俺は許さない。
「好きか嫌いかで言えば好きだって言ってくれたのに?」
「…そりゃあ【入出】の話だろ、ぅ…」
「俺だって入出ですよ」
「…はっ、何馬鹿な事言ってやがる」
カイコクさんが挑発するように笑った。
それしか出来ないカイコクさんの、精一杯の強がり。
…こんな所に縛り付けられるくらいなら俺を殺したって良いはずなのにこうして誕生日を一緒に迎えてくれる辺り、きっとカイコクさんは優しいんでしょうね。
優しくて…そして残酷だ。
「…なら、目の前の【これ】を【入出アカツキ】じゃないって証明してみせなよ」
「…っ」 
カイコクさんが綺麗な目を見開いた。
それからすい、と僅かに目をそらす。
きっと何か考えてるに違いない、から。
思考が纏まらない内に口唇を奪った。
「?!!ん、ぐ…んんぅ、んー!!」
苦しいと言わんばかりにバンバンと背を叩いてくる。
それでも離さなかった。
力が弱まってくるのを待って、待って、待ち続ける。
なぁ、カイコクさん。

愛したって言うのですか、なんて。


(愚問にも程があるよ)



カイコクさんの漆黒の瞳から流れる涙を、アイなんて形容してみたりして。


…先人は悲鳴を歌だと評したけれど、それは間違いではないんだな、と思う。

美しい彼から漏れる息、短く噛み殺した悲鳴、その全てが…。

世界から望まれない俺へのバースデーソング。


(ねぇ、今日は何の日?)

(いい加減そろそろ覚えたろう?今日は……)

司冬ワンライ・おやつ/たくさん

「…ふむ」
司は机の上の惨状を見て少し考える。
流石に持ってきすぎたか。
小さく呟いて宙を仰ぐ。
これからとあるショー劇団と合同練習なのだ。
それ故途中の休憩用に、と買い込んだが…買い込みすぎたらしい。
パーティーでもするのかと笑われてしまい、我に返ったのである。
まあ、菓子は腐らないし、最悪セカイに持って行っても、と宙を仰ぎ過ぎて若干逆さになった視界の先に愛しの人を見つけた。
すぐさま姿勢を戻して教室を出、大きな声を出す。
「おーい、冬弥!」
「…!司先輩!」
パッと頬を緩めた冬弥が駆け寄ってきた。
今からまたイベントだろうか、大きな袋を持っている。
「お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだなぁ!今からまたイベントか?」
「はい。司先輩は…えっと……?」
冬弥が僅かに首を傾げた。
視線の先には大量のお菓子が乗っている。
「随分たくさんですね…?」
「ああ。今日の練習後に、と思ったのだが、買い過ぎてしまった」
「…司先輩らしいです」
柔らかく微笑む冬弥に、司も目を細め、そうだ!と声を上げた。
「冬弥、この菓子好きだったろう?良ければ持っていかないか」
「…!良いんですか?」
「ああ。冬弥が喜んでくれるのなら、オレも嬉しい」 
目を見開いた冬弥が司の言葉にややあってから微笑む。
「…ありがとうございます。…では、俺からも…」
がさり、と冬弥が袋の中をまさぐった。
どうやらたくさんある中から出てきたのは司が好きな菓子で。
「…先輩もたくさん持っておられるのでもしいらなければ…」
「いや、これはオレ個人のおやつにしよう。大切に頂く。ありがとうな、冬弥」
「…はい!」
ふわ、と彼が微笑む。
「しかし、冬弥も菓子をたくさん買っていたのだな」
「イベントの後は体力を消耗するので…。あまり食べすぎてもいけないのですが、その…皆のことを考えると、つい」
「…なるほど」
冬弥も同じことを考えていたらしいと知り、司は笑んだ。
「それと、そのお菓子は司先輩がよく食べておられたので、思い出して買ってみたんです。まさか先輩の手に渡るとは思いませんでしたが」
冬弥が嬉しそうに言う。
そんな彼の頭を、司は思い切り撫でた。
ありがとうな、と告げる彼の顔は、とても幸せそうなそれをしていて。
この後も頑張れるな、と司は満面の笑みを、浮かべた。


優しい彼から手渡される、有り触れた菓子。
(司にとっては、愛がこもった特別な)

ミクの日

本日3月9日。

そう、ミクの日であります。


「…レンくん。ちょっとご相談がありまして…」
「…あ、見て、ミク姉ぇ、誰もいないセカイの兄さんがガチャで来た」
「それ、マスターの前で言わない方が良いよ、仮天井だって発狂してたから…。…って、そうじゃなくて!!」
無邪気なレンくんにノリツッコミをしてしまう。
いや、電子の歌姫に何やらせんの。
「…だってどうせあれだろ、巻き込ミクルカだろ」
「話が早いじゃん」
あまり聞く気がないレンくんに指パッチンをしてみせる。
途端にご迷惑そうな顔をした…ごめんってば。
「ちょっとで良いから聞いてよー!お兄ちゃんの激カワショットあげるからさぁ!」
「…聞きましょう?」
スッとスマホを出せばレンくんは居住まいを正した。
話が早くて助かっちゃうな!!
「明日、ミクの日じゃない?」
「ん、ああ、そうだな」
「ルカちゃん今年15周年じゃない?」
「企業もマスターも盛り上がってるな」
「マジミラの情報もう出たじゃない?」
「今年のテーマ旅行だっけか」
「…ルカちゃんと新婚旅行するの、今年が最適解だと思うんだけど」
真剣な顔の私にレンくんがふっと優しい顔をして…。
「…兄さぁああん!!!ミク姉ぇが疲れてるー!」
「お兄ちゃんに告げ口するのは違うじゃん!!!!!」
台所に向かって叫ぶ弟機を必死で止める。
洒落にならないってば!
本気で心配されちゃうでしょーが!
「…で?プロポーズも成功してない姉機がなんだって?」
「成功してますぅー!毎回大成功ですぅー!!」
「プロポーズ何回もしてんじゃねぇわ!!」
「レンくんだってお兄ちゃんに何回もプロポーズしてるくせに!」
「おれのはプロポーズじゃなくて愛の告白ですぅー!」
「似たようなもんじゃん!」
「全然違うだろ?!!」
「…二人とも」
ギャーギャー言い争いしてると後ろから呆れたような困ったような声が聞こえてくる。
「…お兄ちゃん」
「兄さん!!」
「…仲良いのは良いけど、程々にね?…MEIKOが限界迎えそうになってたよ」
くすくす笑うお兄ちゃんに、二人でゲッと顔をしかめた。
確かお姉ちゃん、収録が続いてたっけ…。
「…一回停戦しよう」
「賛成」
二人して停戦協定を結ぶ。
キレたお姉ちゃんほど敵にしたくはないもんね!
「で?新婚旅行だっけ?」
「そう!!新婚旅行!」
「…ミク、結婚してないのに新婚旅行行くの?」
「……察してやってくれよ…」
お兄ちゃんが首を傾げて、レンくんがぽん、と肩を叩く。
「お兄ちゃん、世界には踏み込んじゃいけない領域があるんだよ?」
「うん??」
私のそれに、お兄ちゃんはハテナを浮かべながらも頷いた。
あんまり深く突っ込んでくれないから助かるなー!
「新婚旅行行くなら、相手の意向はちゃんと聞いた?」
「え?」
「…俺は良いと思うんだけど、相手にも確認を取らなきゃ。…ね、ルカ」
にこ、とお兄ちゃんが後ろを振り向いた。
……え??
「…ええ、そうですわね」
「ルカちゃん?!!!!」
微笑みを称えたルカちゃんが入ってくる。
え、いや、ルカちゃんはリンちゃんと収録のはずでは…?!
「今日は収録が早く終わりまして…。…それで、新婚旅行ですか?」
私のそれに答えたルカちゃんがこてりと首を傾げる。
綺麗な髪がふわりと揺れた。
嗚呼、私の歌姫が今日も超絶可愛い!!
「えぇえと、あの…!」
「私、ミク姉様と結婚式を済ませていない気がするのですが……?」
「そ、そうですね?!」
「では、新婚旅行の前に結婚式旅行ですわね」
にっこりとルカちゃんが微笑む。
設定年齢と同じ数だけミクの日を歩んで来た初音さんでも、ルカちゃんには敵わない!!


(多分、未来永劫ずっと!)


「…ルカ姉ぇ、段々兄さんに煮てきたな…」
「…ふふ、褒め言葉として受け取っておくね?」

KAITO誕生日

どうも、こんばんは。
鏡音レン、14回目の誕生日を去年迎えた14歳の青少年です。
…そう、青少年、なんですよ!!!


「なぁ、ルカ姉ぇ」
「?はい。如何されましたか?レン兄様」
呼びかけるとルカ姉ぇが小さく首を傾げながら振り向いた。
桃色のきれいな髪が揺れる。
「…うちの兄さんどこ行った?」
「カイト兄様なら、カイコさんとお出かけに行かれましたよ」
「相変わらず仲良しだよな。…元が同個体だからかな」
微笑むルカ姉ぇに、思わず考え込んでしまった。
まあ兄さんたちの場合、あんまり問題視してないんだろうけど。
ちなみに兄さんこと始音KAITOの先天性女性型亜種、始音KAIKOさんとは亜種ってだけで特に何の関係もないんだよな。
ま、そんなことはどーでも良いんだよ。
「なあ、ルカ姉ぇはプレゼントで何貰ったら嬉しい?」
「…。…以前相談に乗ってくださったのに」
真剣なおれに、ルカ姉ぇはくすくす笑う。
いやいや、それとこれとはさぁ…?
「大切なのは物ではなく気持ち、でしょう?」
ルカ姉ぇが誕生日の時の相談内容を持ち出してきてパチンとウインクする。
うわもうそれやられたら勝てないんだけど!
「レン兄様は何を貰ったら嬉しいんですの?」
「え、兄さんだけど…」
「…。…ミク姉様にそっくりですわね、レン兄様…」
ルカ姉ぇの質問にあっさり答えれば、年上のこの妹機は失礼なことを言った。
リンに似てるならともかく、ミク姉ぇは失礼すぎじゃね?
「おれ、ミク姉ぇみたいにがっついてないし」
「…ええと……」
「…何か言った?レンくん…?」
「おわ?!ミク姉ぇ?!」 
ズモモ、と効果音が付きそうなくらい殺気立ったミク姉ぇが背後にいた。
マジでやめろよな…ビビるから……!!
「ミク、バレンタイン直後で限界なんだよね……」
「…悪かったって……」
うふふ、と笑うミク姉ぇから目をそらす。
バレンタインライブで忙しいミク姉ぇは鬼気迫る感じがあるんだよなぁ。
「ミク姉様、その辺りで」
「まあ、ルカちゃんが言うなら…」
くすくすと止めてくれるルカ姉ぇにミク姉ぇが息を吐く。
ナイス、ルカ姉ぇ!
「…そういえば、レンくんってお兄ちゃんにちゃんと好きって言ってる?」
「は?なんだよ、急に」
ミク姉ぇが突然そんな質問をしてきた。
それに思わずムッとしてしまう。
おれだってちゃんと…。
「…」
「ちなみに、初音さんは言ってますよ!ね、ルカちゃん!」
「そうですね、毎日言ってくださっていますわね」
にこにことミク姉ぇとルカ姉ぇがそう言った。
「ちゃんと言葉にしなきゃ駄目だよ?初音さん見習って?」
「いや、見習いたくは…」
首を振りかけて少し考える。
確かに最近言葉にしてなかったしな。
「…おれは兄さんが好き。歌はもちろんだけど、優しいところも、ちょっと小悪魔なところも、おれを子ども扱いするところも、子ども扱いするくせにおれが推すとたじたじになるところも、可愛くて好き。後は…」
「…ふふ、愛されてるね」
指折り好きなところを数えていれば楽しそうな声が聞こえた。
振り返ればご機嫌なカイコさんと…。
「兄さん?!」
「…レン」
曖昧な表情の兄さんが笑みを浮かべる。
「もう、恥ずかしいなぁ…」
「だって、好きなんだから仕方ないだろ」
駆け寄ってその手を引いた。
わ、と驚いた兄さんにおれは囁く。
「…愛してるよ!兄さん」



貴方の誕生日に、両手溢れんばかりの愛を、言葉に!!!


(返事はその頬の紅さが語って)



「いいなぁ。…愛されてるね、カイトさん」
「いやぁ、カイコちゃんも存分に愛されてると思うなぁ」
「…私も、それには同意いたしますわ」

しほはるワンライ/逆転・鬼役

「…節分の鬼役?」
「そう。…ちょっと本気出しすぎって言われちゃって」
聞き返す志歩に遥がしょんと落ち込んだように言う。
彼女が言うのは以前の配信で豆まきをやった時のそれだろう。
確かに姉に見せてもらった遥は本気だったが…。
「…でも、本気じゃないと面白くないと思う」
「!日野森さんもそう思う?!」
ぱあっと遥が表情を耀かせた。
どうやら共感が得られたことが嬉しかったらしい。
「やっぱり、何事も本気で行かないとね」
「それは分かるけど…。それに、本気の桐谷さんでも好評だったんでしょ?」
「それは、勿論」
首を傾げる志歩に、遥は迷い無く頷いた。
彼女たちのグループが炎上したとは聞いたことないし、寧ろ好意的に受け止められている。
今回も、「遥ちゃんは何事にもストイックだなぁ」とか、「本気の遥ちゃん素敵!」とかいうコメントが並んでいた気がしたが…間違いではなかったようだ。
「なら良いんじゃない?みんな楽しかったようでみたいだし」 
笑いながら志歩はそれとも、と言葉を紡ぐ。
彼女の綺麗な目が大きく見開かれた。
「逆転されたかった、とか?」
「…まさか」
ふふ、と彼女が強気に笑う。
「負けるのが必須な鬼だからって手加減はしないよ?」
「…流石桐谷さん」
存外負けず嫌いな遥に、志歩も笑みを返した。
綺麗な彼女はそれだけではないことを、知っている!




「…Leo/needとMOREMOREJUMP!との豆まき勝負とか面白いかも…?」
「…面白いかもしれないけどやめてね、うち、そこまでガチ勢いないから」
「?日野森さんがいるでしょう?」
「…勘弁。桐谷さんとはギスギスしたくないからね」

「しっかし、まさか冬弥がフォトコンテストに参加するとはな…」
セカイからの帰り道、彰人がスマホの画面を見ながら呟く。
「…そう、だろうか?」
「ああ。なんつーか…意外だった」
こてりと首を傾げる冬弥に、彰人は頷いた。
こはねに協力する形とはいえ、まさかメイクまでしてフォトコンテストに参加するとは思わなかったのである。
…まあ仲間思いで、最近は色んなことに挑戦したがっている冬弥だから、よく考えれば納得できるのだが。
「メイクもモデル役も、良い経験だった」
「お前がそう言える経験なら良かったよ」
微笑む冬弥に、彰人も息を吐き出す。 
彼が楽しそうにしているのは、チョコレートを貰う、という事実に優って嬉しい事実だ。
それを伝えてやれば、びっくりした顔をしてからふわりと微笑む。 
「…それは…彰人のお陰だ、と思う」
「…オレ?」
「ああ。お前の隣に立つには経験が足りないと常々思っていたからな」

ザクカイ♀️バレンタイン

「…なぁ、忍霧」
「…どうした、鬼ヶ崎」
何かを読んでいた彼女がそれをパタンと閉じてこちらに向き直る。
やっとか、と思いつつザクロも顔を向けた。
「やっぱりどうしても理解出来ねェんだが」
「だから言っただろう」
悔しそうな彼女に、ザクロは小さく息を吐き出す。
女子メンバーから何やら貸し出されたらしいそれはカイコクを(ついでにザクロも)悩ませていた。
「無理なら無理と言えば良かったものを…」
「…。…嬢ちゃんたちの好意は悪意がねェからな…」
珍しく彼女が長い黒髪を振りながら口ごもる。
確かにカリンやヒミコは純粋に応援している気もするが…ユズはどうだろうか。
まあそれに言及すればせっかくのバレンタインが台無しになるから黙るしかないのだが。
代わりにまた息を吐き、ザクロは目線をそらす。
それもそのはず、カイコクが先程から苦戦しているのはネグリジェだった。
どこから調達したんだと頭が痛くなる。
彼女は普段浴衣だからか、こういう下着は慣れていないらしかった。
さっさと着こなしそうなイメージがあったので少し驚きはしたが。
それを知れただけ収穫だろうか。
説明書と散々にらめっこした挙句諦めたらしいカイコクに、自分の上着を投げて寄越す。
「っ!忍霧!」
「着ておけ。…風邪を引く」
キッと睨む彼女にザクロはそう言った。
一応暖房は効かせてあるが肌襦袢1枚では寒かろう。
「…」
「それに、…その、ネグリジェを着たところでどうするつもりだ」
「…は、え?」
「…貴様が簡単に着ることが出来ないものを、俺が脱がせてやる事が出来るとでも?」
「う、え…?」
ザクロの言葉に彼女が目を白黒させた。
いつも飄々としているくせにザクロが少し推すだけで慌て出すのは可愛らしいところだと言えよう。
「…お、忍霧?」
「もう待ちくたびれたのだが」
「バレンタインは始まったばかりだろ、ぅ?!」
後退る彼女を逃げるな、とその腕を引いた。
「始まったばかりだからこそ…無駄にしたくない」
真剣なザクロにたじたじになったカイコクに口付ける。


夜は、まだ始まったばかり。


…ネグリジェの陰に隠されたチョコレートに気づくまで…後、数時間。

マキノ誕

今日は自分の誕生日だ。
それを思い出したのは奇しくもそれがバレンタインと同日だったからである。
愛を知らないマキノの誕生日が愛を伝える日と同じなのは何の皮肉だろうか。
「…逢河?」
「…。…カイコッくん?」
ひょいと姿を見せて不思議そうに首を傾げたのは鬼ヶ崎カイコク…愛を蹴散らす人だ。
そんな彼の隣はとても心地よく感じる。
…無理に愛を押し付けて来ないから。
「…隣、良いかい?」
ややあってそう聞く彼にこくんと頷いた。
彼がマキノの隣に収まる。
ふふ、と楽しそうにカイコクが笑った。
何か楽しいことがあったろうか、と思っていれば彼がもたれかかってくる。
「…カイコッくん?」
「…。…誕生日プレゼントでェ」
ふわふわと微笑みながら言う彼にマキノはほんの少し目を見開いた。
カイコクは存外律儀な人だ。
こうやって毎年祝ってくれる。
…それだけで。
「…カイコッくんの、おめでとう…聞きたい」
「…お前さん、ちょっと欲張りになったな」
きれいな瞳を丸くした彼がふは、と笑った。
赤い紐が跳ねるように揺れる。
「…だめ?」
「ったく、しゃあねぇ」
首を傾げれば、カイコクは「お誕生日様だからな、特別でェ」と微笑んだ。
いつもの、仲間たちに見せる顔とは違った優しい…それで。
「誕生日おめっとさん、逢河」



優しい夜の、年に一回の恒例行事。



今はただそれだけで、と、マキノは目を細めた。