正月(へし燭SSS・ワンドロお題)

「・・・わざわざ、この人ごみに来る必要があったのか・・・?」
人込みを見上げ、長谷部はぜえぜえと息を吐く。
そんな長谷部を見るのは困ったように笑う光忠だ。
「だってお正月だし、一応・・・ね?」
隣の彼はいつもの服とは違って黒の着物を着ている。
今日は1月1日、新しい年だった。
「破魔矢 を買ってくる」よう主命を受け、長谷部はこうして神社へと赴いたのである。
が、流石正月、凄い人だった。
「お参りしていこう、ね?」
「・・・俺たち自身神なのにか」
「付喪神と神社の神様はまた違うものだと思うよ」
にこ、と笑う光忠に言えば彼は笑ってそう言う。
・・・まあ一理あるかもしれない。
お金を投げ入れ、手を合わせる。
「行こうか。・・・随分長かったけど、何を報告してたの?それともお願い?」
境内から離れる際にそう聞かれ、長谷部は笑って見せた。
「言わん」
「え?」
「言ったら叶わなくなるだろう?」
きょとんとする光忠にそう言って手を取る。
人込みで、離れぬよう・・・それを強く握った。
「行くぞ」
「・・・うん」
光忠が笑う


願わくば・・・彼と永久に幸せな生活を送れます様に



「あ、おみくじ吉だ。長谷部くんは?」
「・・・半吉だ」
「・・・?それ、良いの?悪いの?」
「・・・お前が隣にいるのだから良いのだろう、きっとな」

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