遠い距離と近い声

今日は司の誕生日である。
その日の夜かかってきたのは、愛しい彼からで。
「冬弥か!どうした?」
ごろんとベッドに寝転びながら司は冬弥に問う。
昼間も電話をくれたのに、珍しいなと思った。
『いえ。…少し、声が聴きたくなってしまって』
わくわく感を滲ませた彼の声に、司も思わず笑ってしまう。
実は冬弥は今アメリカにいるのだ。
だから、きっと。
『司先輩がどんなお祝いをされたのか…気になってしまって』
「なるほど。では聞かせてやろうではないか!」
司は電話に向かって高らかに…すると、妹から注意されるので少しトーンを落として宣言する。
それから、今日合ったことを順繰りに話してやった。
冬弥は聞き上手で、良いリアクションをしてくれるから、ついついたくさん話してしまう。
「…と、まあとても良い1日だったぞ!」
『それは、素晴らしい1日でしたね』
「ああ!締め括りに、冬弥からこうして電話ももらったしなぁ」
遠い地にいる彼に、司は言った。
早く会いたいが一生会えないわけではない。
彼だって目標のために頑張っているのだ。

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