どうもこんばんは。
えーっと、初音ミクです。
わたしは今、なんと。
…造花の花畑にいます。
「…うっわぁ、すっごい量」
「…いらっしゃい、ミク姉ぇ」
レンくんから相談があるって言われて迂闊にふらふら行くもんじゃなかったな、と後悔するくらいのそれ。
その中心で静かに微笑むレンくん…嫌な予感しかしないなぁ…。
「はいはい、いらっしゃいましたー。で、なぁに、これ?内職?」
「いや?兄さんにプロポーズしようかと」
「…なんて??」
近くにあった青い薔薇の造花を取り上げて聞くと、レンくんからなんかすっごい一言が返ってきた。
…初音さん扱いきれないよ?
「だから、兄さんにプロポーズを」
「良かった聞き間違いじゃなかった良くないけど!」
しれっと言う弟機に、思わず声を大きくしてしまう。
レンくんが眉を顰めた。
「んだよ、ミク姉ぇが言ったんだろ。…プロポーズするなら造花が良いって」
「それは言った」
不満そうなそれにわたしは頷く。
レンくんが薔薇の花を渡す相手、つまりはうちのお兄ちゃん…KAITOは珍しい個体で、お菓子作りが大得意なんだよね。
だから、サプライズはお菓子やケーキじゃなくて花束が良いよ、造花なら一生置いとけるし、とは言った。
確かに言った。
ちなみにわたしもルカちゃんにピンクと黄緑の造花のバラのブーケを誕生日プレゼントにする予定だ。
でも。
「わたしはもうちょい常識的な数だよ??」
「何本?」
「12本」
首を傾げたレンくんにそう言う。
バラのブーケと言えば12本が一般的っていうもんね!
「初音さんが常識的だぁ」
「うるさいですぅ。レンくんは?これ何本あるの??」
ちょっと意外そうにレンくんがこっちを見るから、わたしは聞いてみた。
100くらい?ありそうだけど…。
「聞いて驚け、300です」
どや顔をするレンくん…バカなのかな…??
「300はバカの数字だよ…?」
「いやぁ、楽しくなっちゃって」
「お兄ちゃん絶対困ると思うんだけど…」
あんまり困ってなさそうなレンくん…受け取る方は困ると思うけどなぁ。
「もー、暴走は初音さんの専売特許だよ?」
「何でだよ、おれにだって暴走する権利あるだろ」
薔薇の花を集めながらレンくんが言う。
そういう問題じゃなくてね?
レンくん、いつもはツッコミタイプだから、調子狂っちゃうなぁ。
「ところで、相談ってなぁに?ブーケの作り方?」
「いや、それは別にいいんだけどさ」
はぁ、とため息を吐き出したレンくんが真剣な顔で向き直る。
え、この流れで真面目な相談??
「…兄さんが忙し過ぎて会える気がしねぇ」
「…へ?」
キリッとした表情とは真逆の相談内容にぽかんとしてしまう。
…え?なんて??
「兄さん、20周年じゃん」
「うん」
「今、色んなとこで祝われてるじゃん」
「うん」
「17日に会えるか心配してんだけど」
「…初音さん帰って良い?」
レンくんのそれに思わず言ってしまった。
いや、わたしも大分困ってるからね??
なんでレンくんはお兄ちゃんが絡むとこんななんだろ。
「いや、真剣な悩みだからな?!」
「大丈夫だよー。マスターもそんな意地悪じゃないってー」
「…初音さん、自分の誕生日に仕事入れられたことをお忘れで…?」
「…忘れてましたね」
二人して真顔になる。
うちのマスターはそういう人だ。
あんまり記念日とか頓着しないんだよねぇ。
だからわたしたちがこんな執着しちゃうのかも…?
「まあ、当日いなかったら迎えに行ったら?」
「…それもそっか」
「…レン兄様…?ミク姉様…?」
あはは、と笑うわたしにレンくんが真剣に頷く。
それに声をかけてきたのは。
「…ルカ姉ぇ!」
「ルカちゃん!」
おろ、とするのはわたしの愛しい末妹、ルカちゃんだ。
うーん、今日も可愛い♡
「ルカ姉ぇ、オーバーヒート良くなったんだな」
「はい、お陰様で。あの時はご迷惑おかけしてすみません」
ペコリ、謝るルカちゃんに、「おれは別に何もしてないし」と、レンくんが手を振った。
実はルカちゃん、誕生日にオーバーヒートでぶっ倒れちゃったんだよね。
その後も数日動けなくって、ちょっとメンテナンスとか行ってたから今日やっとお誕生日デートするんだー!
…って、わたしたちの話は良くって。
「あ、あの…レン兄様…?」
「ん?何、ルカ姉ぇ」
おずおずとルカちゃんがレンを見る。
「流石に…その量の花束を持ってお仕事先に行くのはカイト兄様もお困りになるのでは…?」
「…やっぱり?」
「はい。ですので、おうちで待っておられた方が良いと思います!」
真剣な表情のルカちゃん…。
…あれこれもしかして。
「うーん、けどなぁ」
「じゃあ今もう渡しちゃえば?」
何故か悩むレンくんに、わたしは言う。
それから、ぐいっとその腕を掴んで引っ張った。
「うわっ!」
「兄さん?!いつからそこに!」
引っ張り出されたお兄ちゃんに、レンくんも目を丸くする。
「…ミクが来た辺りから…」
「まあまあ最初じゃん…!」
観念したようにお兄ちゃんが言う…そんな前からいたんだ。
てっきりルカちゃんが来た辺りからだと思ったんだけどな。
「まあお兄ちゃんもさ?周年のお誕生日様なんだし、プロポーズ受けといたら?」
「そんな簡単に…」
「み、ミク姉様!」
困ったようなお兄ちゃんに、何故かルカちゃんまで慌て出す。
どうしたんだろ、と思っていたらレンくんがにやりと笑った。
「お膳立てサンキューな、ミク姉ぇ、ルカ姉ぇ。それから…兄さん」
珍しい笑みを浮かべるレンくんがお兄ちゃんに近付く。
…あー、そういうこと。
「…当日、覚悟してろよな」
「ちょっと待っ…!」
「めっっっっちゃ祝ってやるから…さ?」
レンくんが不敵なそれをお兄ちゃんに向けた。
揺れる300本のバラの花束は…。
当日までお預けみたいだね?
(300本のバラの花束
その意味を隠そうともせずに)
「いやぁ、周年のお誕生日さまは大変ですなぁ」
「はいはい。…ルカ姉ぇだって20周年の20歳なんてすぐそこだからな」
「レン……」
「ミク姉様…」
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