ミクの日

本日3月9日。

そう、ミクの日であります。


「…レンくん。ちょっとご相談がありまして…」
「…あ、見て、ミク姉ぇ、誰もいないセカイの兄さんがガチャで来た」
「それ、マスターの前で言わない方が良いよ、仮天井だって発狂してたから…。…って、そうじゃなくて!!」
無邪気なレンくんにノリツッコミをしてしまう。
いや、電子の歌姫に何やらせんの。
「…だってどうせあれだろ、巻き込ミクルカだろ」
「話が早いじゃん」
あまり聞く気がないレンくんに指パッチンをしてみせる。
途端にご迷惑そうな顔をした…ごめんってば。
「ちょっとで良いから聞いてよー!お兄ちゃんの激カワショットあげるからさぁ!」
「…聞きましょう?」
スッとスマホを出せばレンくんは居住まいを正した。
話が早くて助かっちゃうな!!
「明日、ミクの日じゃない?」
「ん、ああ、そうだな」
「ルカちゃん今年15周年じゃない?」
「企業もマスターも盛り上がってるな」
「マジミラの情報もう出たじゃない?」
「今年のテーマ旅行だっけか」
「…ルカちゃんと新婚旅行するの、今年が最適解だと思うんだけど」
真剣な顔の私にレンくんがふっと優しい顔をして…。
「…兄さぁああん!!!ミク姉ぇが疲れてるー!」
「お兄ちゃんに告げ口するのは違うじゃん!!!!!」
台所に向かって叫ぶ弟機を必死で止める。
洒落にならないってば!
本気で心配されちゃうでしょーが!
「…で?プロポーズも成功してない姉機がなんだって?」
「成功してますぅー!毎回大成功ですぅー!!」
「プロポーズ何回もしてんじゃねぇわ!!」
「レンくんだってお兄ちゃんに何回もプロポーズしてるくせに!」
「おれのはプロポーズじゃなくて愛の告白ですぅー!」
「似たようなもんじゃん!」
「全然違うだろ?!!」
「…二人とも」
ギャーギャー言い争いしてると後ろから呆れたような困ったような声が聞こえてくる。
「…お兄ちゃん」
「兄さん!!」
「…仲良いのは良いけど、程々にね?…MEIKOが限界迎えそうになってたよ」
くすくす笑うお兄ちゃんに、二人でゲッと顔をしかめた。
確かお姉ちゃん、収録が続いてたっけ…。
「…一回停戦しよう」
「賛成」
二人して停戦協定を結ぶ。
キレたお姉ちゃんほど敵にしたくはないもんね!
「で?新婚旅行だっけ?」
「そう!!新婚旅行!」
「…ミク、結婚してないのに新婚旅行行くの?」
「……察してやってくれよ…」
お兄ちゃんが首を傾げて、レンくんがぽん、と肩を叩く。
「お兄ちゃん、世界には踏み込んじゃいけない領域があるんだよ?」
「うん??」
私のそれに、お兄ちゃんはハテナを浮かべながらも頷いた。
あんまり深く突っ込んでくれないから助かるなー!
「新婚旅行行くなら、相手の意向はちゃんと聞いた?」
「え?」
「…俺は良いと思うんだけど、相手にも確認を取らなきゃ。…ね、ルカ」
にこ、とお兄ちゃんが後ろを振り向いた。
……え??
「…ええ、そうですわね」
「ルカちゃん?!!!!」
微笑みを称えたルカちゃんが入ってくる。
え、いや、ルカちゃんはリンちゃんと収録のはずでは…?!
「今日は収録が早く終わりまして…。…それで、新婚旅行ですか?」
私のそれに答えたルカちゃんがこてりと首を傾げる。
綺麗な髪がふわりと揺れた。
嗚呼、私の歌姫が今日も超絶可愛い!!
「えぇえと、あの…!」
「私、ミク姉様と結婚式を済ませていない気がするのですが……?」
「そ、そうですね?!」
「では、新婚旅行の前に結婚式旅行ですわね」
にっこりとルカちゃんが微笑む。
設定年齢と同じ数だけミクの日を歩んで来た初音さんでも、ルカちゃんには敵わない!!


(多分、未来永劫ずっと!)


「…ルカ姉ぇ、段々兄さんに煮てきたな…」
「…ふふ、褒め言葉として受け取っておくね?」

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