人/柱アリ/ス×フラハイで小説!四番目

キャラ崩壊注意!








ーーー

長い小道が続く、森の中で。
「ヴァイスーっ!あたし疲れちゃったぁ」
「もう少し頑張れませんか?ラナさん」
ツインテールを揺らして不満そうに言う少女に青年が振り向いてそう言いました。
「だってぇ」
「大体、此処に来る嵌めになったのはラナさん、貴女の所為でしょう?」
あぁ来たというよりラナさんは落ちたって感じでしたよね、と青年はわざとらしく言います。
くすりと笑う青年に少女は頬を紅く染めました。
「落ちたって言わないで!後っ、ヴァイスだって賛成したじゃないっ!!」
「そうでしたか?」
「そうだよっ!!」
もーっと口を尖らせる少女、ラナにヴァイスと呼ばれた青年は苦笑しながら上を見上げます。
「まぁ・・・扉を開けたのは私ですし」
「でも結局あの扉なんなんだろーね?このトランプも分かんないし」
腕を組むヴァイスを見上げてラナがポケットから一枚のトランプを取り出しました。
半分になったハートのエースが描かれたそれは金の縁取りとなにやら模様が刻まれています。
「王家の物だということは見れば分かるのですが」
少し考えるそぶりをするヴァイスにラナがその袖を引っ張りました。
「・・・ねぇ、この道って本当にお城に続いてるのかな?」
「道は1本だったでしょう?・・・この森の道が円になっているなら分かりませんが」
「えーっ、じゃあ一生着かないよっ!!」
こんなに歩いたのに!!と座り込もうとするラナを止めなさい、とヴァイスが止めます。
「まぁ・・・歩き通しですから分からなくもないですけど。こんな赤い路に座ろうとするのは止めた方がいいかと」
「・・・うん、だね。なんだか不気味だし」
ヴァイスの言葉にラナも頷き、にこっと笑いました。
「行こっ、お城は見えてるんだしね!」
「そうですね・・・ラナさんが無駄にした分まで急がなければいけませんし?」
「あーっ、そういう事言うー?!」
くすりと笑うヴァイスにラナがぶすくれます。
その様子は本当に微笑ましいものでした。
ラナと呼ばれていた少女は銀の長いツインテールにルビーの瞳、一方ヴァイスと呼ばれていた青年はさらりと耳の横で揃えられた銀髪にサファイヤの瞳です。
それ以外は双子の如くそっくりで、どちらかがどちらかの格好をすれば見分けがつかない程でした。
実際本当に双子なのかもしれません。
「ヴァイス見て!家がある!!」
暫く歩いた二人が見つけたのは、家と言うよりも小屋と形容した方が良いほどの小さな家でした。
遠目からでも良く分かるほどにその家には不釣合いな位立派な庭があります。
「本当ですね・・・」
「お城の場所を聞いてみない?」
「・・・そうですね、闇雲に歩くよりはその方がいいでしょうし」
「じゃあ決まりだね。・・・すいませーん」
ヴァイスの言葉ににこっと微笑んだラナは家の中に向かって声を張り上げました。
「・・・はい?」
「あれっ?レイナス?」
家の中から出てきた栗髪の青年を見てラナが目を丸くします。
そしてその名を聞いた栗髪の青年も驚いたようにラナを見てからにこりと笑いました。
「どうしたんだ?二人とも。こんなトコで」
門を開けながらレイナスと呼ばれた青年が微笑みます。
「ちょっと。・・・それにしても凄い数の薔薇ですね」
ヴァイスも微笑んで真横に咲いている薔薇の花を一輪撫でました。
「綺麗だねーっ、でも蒼ばっかり」
「あぁ。・・・どうぞ。お茶でも飲んでいかないか?」
はしゃいだ様子のラナに苦笑しながらレイナスは黒い門を開け放ち二人を迎え入れました。
薔薇の木の下に置かれたテーブルに案内された二人は暫くレイナスと世間話をしていましたが、ふと、ラナが何かに気付いたように首を傾げました。
「ねぇレイナス、あの箱はなぁに?」
「あぁ、あれ?・・・紅い薔薇が入ってる」
無邪気なラナの声にレイナスが嗤います。
その笑みはどこか狂気じみているように見えました。
「・・・そろそろお暇しましょうか、ラナさん」
「え?う、うん」
「もう行くのか?もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「残念ですが私達はお城に向かっているので」
「そうなんだ。・・・じゃあこれは二人のかな」
にこり、と笑ってレイナスが取り出したのはあのトランプです。
よく見れば最初に持っていたものの片割れのようで、二人は顔を見合わせました。
「これは?」
「お城への招待状。俺は呼ばれることはないからこれは二人のだ」
はい、とそのカードをヴァイスに渡しながらレイナスは笑います。
二人が来た道と逆の方を指差してレイナスが立ち上がりました。
「この道をまっすぐ行けばお城に着くよ」
「ホント?!じゃあ道は合ってたんだねっ、ありがと!レイナス」
行こう!とラナがヴァイスの手を引っ張ります。
振り返ったヴァイスの目に映ったのは、じゃあねと歪な笑顔で手を振るレイナスの姿でした。
「・・・ヴァイス、あれ」
「ええ、そうです、ラナさん」
意味深な会話を交わした二人はにこりっと笑いあって駆け出します。
そして背後から聞こえる自分達以外の足音を確認した二人は一旦止まってからまたゆっくりと歩き出しました。
暫く歩いたところで顔を見合わせくすりと笑います。
「・・・ストーキングなんて趣味悪いと思わないの?」
くるりっとツインテールを弾ませてラナが振り向きざまに言いました。
「あら、気付いてたの」
驚いたように言ったのは夢です。
わざとらしいそれにラナは一瞬ムッとしたようでしたがすぐに微笑みました。
「そりゃ。一応戦闘には自信あるのよ?・・・敵の気配くらいすぐ気付くわ」
可愛らしく言うラナに困ったように夢が笑います。
「敵なんて・・・そんな。私はただの夢よ?」
「では何故ルナさんの容姿をしてるんです?・・・私達を欺く為としか思えませんが」
「あら。何故そんな事を・・・耳の所為かしら?」
「そんなことないですよ。・・・さっきのレイナスさんも偽物でしょう?」
兎の耳を指す夢にヴァイスは笑みを浮かべました。
ねぇルナさん、と蠱惑的に笑むヴァイスに夢は表情を歪めます。
「・・・その名前で呼ばないで」
「どーして?ルナって素敵だと思うわ」
つい、と横を向く少女に追い討ちをかけるように無邪気にラナが聞きました。
「・・・いいわ。そんなに此処が気に入ったのね」
良かったと夢が微笑みます。
その言葉を聞いてヴァイスの眼が真剣になりました。
「・・・どういうことです」
「此処に住んでくれるんでしょう?」
私の機嫌損ねちゃって、と夢が至極楽しそうに笑います。
「・・・此処、とは」
「夢の中・・・つまり私の中よ」
「・・・どーいうこと?」
ヴァイスの質問に答えた夢の答えに、ラナが首を傾げました。
「此処はね、願いを叶える場所なの」
「理解が出来ませんね。それでは貴女にメリットがない」
「メリットならあるわ。皆が此処にいてくれる。私の事を知ってくれている人が、此処に」
夢が自分の胸の前に手を置きます。
寂しげな表情を浮かべる少女は哀れにも映りました。
「此処は何処です?」
「だから夢の中だと言ってるでしょう?」
「・・・質問を変えましょうか。・・・何故私達をここに連れてきたんですか?クラウディアから連れ出して、狙いはなんです。そも、何故貴女は私たちの事を知ってるんです?ルナさんの格好をして、神にでもなったおつもりですか」
「ルナじゃないってすぐ分かるんだからっ。貴女は誰なの?私達を、皆を元の世界に戻してよっ」
冷静に質問を重ねるヴァイスと、毅然として言い放つラナを見て夢が一瞬顔を歪めましたがすぐににこりと微笑みます。
「凄い!誰も気付かなかった事を気付いたのね。・・・何故此処に連れて来られたか、自分は何処から来たのか、何故私が貴方たちの事を知っているのか・・・そも私は誰なのかと言う根本的事実を」
楽しそうに言いながら夢は手を振りました。
突如として地面が割れて二人の体が宙に浮きます。
短い悲鳴を上げて落ちていく二人は、さながら開いた扉に吸い込まれていくようでした。
「・・・いったぁい・・・」
「大丈夫ですか、ラナさん」
尻餅をついたラナにヴァイスが手を差し伸べます。
「うん、へーき」
えへへ、と笑ってその手を取り、立ち上がったラナはすぐにヴァイスと共に前を向きました。
視線の先では夢がくすくすと笑っています。
「願いを叶えてあげるわ」
「では場所を変えた理由と後、先ほどの質問に答えてください」
「答えたでしょう?私は夢、此処は私の中、此処は貴方達の、貴方達だけの願いを叶える場所」
夢は笑って言いました。
確かに今まで通ってきた道とは違うようにも、同じようにも思えます。
「貴方達の願いは、なぁに?」
「私達の願いは」
「自分の世界に戻ることよ!」
強い目をして二人が夢に言い放ちました。
「・・・それは難しい願いね」
「っ、ラナさん!」
「・・・え、きゃぁっ!!」
呟くような少女の声に、咄嗟にヴァイスがラナの腕を引きます。
途端、ラナの綺麗な銀のツインテールが二本、宙に舞いました。
彼女の短くなった髪がはらりとその頬にかかります。
「・・・な、に・・・」
「・・・イスファル、さん?」
そこに居たのは、境なく剣を振り回し、紅いドレスに、エプロンドレスの白色とそして綺麗な水色だった眸を真っ赤に染めた・・・まるで狂気に囚われたようなイスファルでした。
「貴女!イスファルに何したの?!!」
ラナの悲鳴のような言葉に夢は嗤います。
「私は彼の願いを、夢を叶えてあげただけ」
「あれが?彼はそんな事を望んでいないと思いますが」
言い切るヴァイスに夢は嗤って手を振りました。
突如地面が揺れ、繋いでいた二人の手が外れます。
「ヴァイス!!」
「ラナさんっ!」
引き裂かれた二人の間に出来た巨大な壁は鏡の様で、お互いが自分を見ているのかそれとも片割れを見ているのか判然としないのでした。
愕然とする二人に聞こえてくるのは耳障りなほどの嗤い声と剣が物を斬りさく‘音’だけです。
二人は昂然と顔を上げました。
「・・・ねぇ、一つだけ答えて」
「・・・一つだけ伺っても?」
「えぇ、構わないわ」
「「・・・貴方は一体何?」」
ぴたりとユニゾンの様にハモった二人の声に夢は嗤います。
「貴方達がまた会えたら・・・私の中から出られれば、答えてあげるわ」
嗤う夢に、二人はお互いに背を向けて走り出しました。
・・・闇に落ちた仲間と、自分達が元の世界に戻るために。





「貴方達の門出に祝福を。・・・ヴァイス、ラナ(四番目アリス)」


・・・「          」、そう、くすりと嗤って呟いた夢の声は・・・二人には届いていたのでしょうか・・・ー。

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