父の日・レオ仔優(鳩彼SSS

「あ、の」
声に振り向くと小さな彼・・・坂咲優夜が立っていた。
「どうした」
「・・・あの」
おずおずと私を見上げ、後ろに回した手を出そうかどうしようか迷っているようだ。
「何か用事か」
「・・・え、と・・・。・・・きょう、ちちのひだときいて・・・」
「父の日?・・・ああ」
彼の言葉にカレンダーを思い返す。
確かに今日は父の日だった。
「・・・これ」
差し出されたのは小鳩にしては綺麗な字で『なんでもけん』と書かれた数枚の紙。
「・・・なにをしたらいいかわからなくて、あの・・・すいません」
申し訳なさそうに坂咲優夜がそう言う。
どうもこのクジャク鳩は自分が役立たずだと思っているらしい。
「謝る事はないだろう。私は嬉しい。・・・お前の気持ちがな」
「・・・ほんとうですか?」
「ああ」
私の言葉に、彼がぱあ、と表情を輝かせた。
素直で可愛らしい小鳩だ、本当に。
「有り難う、坂咲優夜」
嬉しそうにする彼の頭を撫でて私は心からそう言った。



頬杖をついて書類に目を通している坂咲優夜を見つめ、ふと昔の事を思い出す。
何も出来ないと言っていたあの頃とは違い、今では立派に私の右腕を務めている高校生の坂咲優夜がそこにいた。
「坂咲優夜」
「?なんです?JB」
呼びかけるときょとんとした目で彼が見上げる。
ふいに見せる表情はあの頃と同じだ。
使わずに取っておいたあれを見せればこの部下は驚くだろうか。
「あの、」
「この券は今でも有効だろうか」
不思議そうな彼に少し黄ばんだそれを差し出す。
途端に目を見開き、「まだ持ってたんですか?」と尋ねるこの若鳥に私はくすりと笑った。

子供から貰った物はいつまでも取っておきたいと思うのは親として当然ではないか?

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