鬱的花言葉で1日1題・ヒュロイ(コリアンダー/タツナミソウ・鋼SSS

野郎ばっかの戦場で

お前は一輪の華だと、そう思った






中央司令部よりすこし小さい、東方司令部を見上げる。
此処に来るのも久しぶりだ。
「よぉー、ロイ!」
「・・・ヒューズ」
司令室で珍しくも仕事をしているロイに手を上げて見せると、途端に嫌そうな顔をした。
「来るときは連絡くらいしろとあれほど・・・」
「いやぁ、悪ぃ悪ぃ!!」
ロイの文句を聞き流しながらソファに座る。
そんな俺に小さく溜め息を吐いたロイが立ち上がって、俺の前に座った。
「急用か?」
「いや?ただの休暇」
ニッと笑うとはあ、とあからさまな溜め息を吐く。
こいつにしちゃ珍しくノリが悪いみてぇだ。
「・・・休暇くらい家に帰ってやれ。グレイシアが悲しむぞ?」
「その、グレイシアが今旅行中なんだよ。あ、写真見る?」
「いらん」
きっぱり。
ロイはこういうやつだ。
昔から変わらんなぁ、まったく。
「・・・お前に会ってもう15年になるな」
「・・・ん、ああ、そうだな」
いきなり何だ、と言わんばかりにロイが俺を見る。
「お前さん、目標には近づけたか?」
「・・・さぁな」
俺の問いに、くすりとロイが笑った。
その微笑みは今まで見てきた女性のどれより綺麗で。
ああ、ロイ・マスタングだ、と思う。
「で?俺以上の男は見つかったか?」
「なんだ、『俺以上』とは。・・・まああれだな。ハボックは見込みはあるがまだまだ、といったところか」
ロイが顎に手を当てながらそう言った。
・・・あのわんこ、相変らず振り回されてんのな・・・。
「エドは?」
「技術こそ見込みはあるが性格に難有りだ。もう少し落ち着くべきだと思うが」
「はぁはぁ。相変らず辛辣ねー、ロイちゃん」
「煩い。・・・大体お前は何をしに来たんだ・・・」
呆れた目で俺を見るロイに笑いかける。
黒い瞳に黒い髪。
同い年に見えない童顔の。
可愛い可愛い俺の、親友。

「・・・暫く嫁にやれそうにないな、こりゃ」
「はぁ?エリシアか?」
「なーんでもねぇよ」
首を傾げるロイの髪をくしゃりと撫でた。
ハボの野郎も、エドも、きっとこいつの助けになる。
俺がいなくても、こいつはやっていけるだろう。
それでも、俺は。
「・・・お前さ、タツナミソウって知ってるか?」






ずっとお前を護ってきたんだ


2人がこいつを知らない時から・・・ロイと初めて出会った時から、ずっと






・・・なぁ、ロイ


お前のためなら命を捧げて見せるよ


お前はそれを望まないとしても


それがお前の願いに繋がるのなら


「大佐!」
「おおい、大佐!」
「・・・ああ、すぐ行く!」

花が揺れる


まるで、そこに誰かがいたかのように


ーー
ヒュロイ・辛辣/私の命を捧げます

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