岩坂ちゃんポッキーの日!(鳩彼・SSS

「ポッキーいかがですか?岩峰先生」
書類に向かっていた私の目の前に何かが振られる。
顔を上げると、菓子を手に坂咲君が楽しそうに笑っていた。
「・・・結構です。今は」
「そうですか?働き詰めの先生に休息を、と思ったんですけどねぇ」
私の返答に坂咲君がくすくす笑いながら言う。
どこか浮かれた様子の彼を、私は溜め息を吐いて見つめた。
「ミルもお菓子ほしいのだーー!」
「カクもあまあましたいのだー!」
「はいはい。こっちおいで」
彼の周りでひょこひょこ跳ねる彼らに笑いかけながら、坂咲君は私の傍から離れる。
初めて彼らに遭遇し、坂咲君に押し付けてから数ヶ月経つが、扱いにも随分慣れたようだ。
「おかしうまうまなのだー!」
「しゅうもあまあますればいいのにわっしょい!」
騒ぐ彼らを一瞥する。
・・・まったく、くだらない。
食事など摂らなくても生きていける。
間食等尚更だ。
そんなものに時間を割くなら研究に時間を費やしたい。
「先生は興味ないからねぇ、こういうの。3羽だけで堪能しよう」
くすり、と坂咲君が笑う。
・・・何がそんなに楽しいんでしょうねぇ。
坂咲君が菓子を口に含む。
咀嚼する度不規則にそれが、揺れた。
「・・・坂咲君」
「はい?なんです・・・」
立ち上がって、彼の背後に立つ。
不思議そうに振り仰いだ、坂咲君の口にあったそれを手を使わずに奪った。
「貰っておいてあげましょう」
「・・・いらないって言ったの、誰でしたっけ?」
「先程は先程。気が変わったんですよ」
少し不満そうな坂咲君に小さく笑う。

それに私は、今は、ときちんと言ったんですがねぇ。

name
email
url
comment