伝えたい気持ち(ボカロ ミクルカSSS(ちょこっとグミリリ)
ルカちゃんが、冷たい。
スタジオからの帰り間際、ケータイに伸ばしかけた手を戻しながら私はそういう結論に至った。
そりゃあね?
ミクちゃんだって最初は声が聴こえなかったのかなーとか、忙しかったのかなーと思いましたよ?
でも、でも、お姉ちゃんやリンちゃんに接する様子を見てて思ったのよね。
あからさまに、避けられてると!!!
「・・・はあ」
「?どうか・・・したの?」
溜息をつく私に声をかけてきたのは、流れる金髪をふわりと揺らすリリィちゃんだった。
最近になって私たちにも敬語が取れてきたのよね、リリィちゃん。
最初はカチコチに緊張してたんだから。
ちょっとは友達と思ってくれてるってことだよね?
えへ、嬉しいな。
「リリィちゃん」
「疲れた時にはすっぱいものがいいって先生言ってたよ。・・・食べない?」
にこりと微笑んで黄色い飴玉を差し出してくる。
ああ、優しいなぁ・・・!
「ありがと。・・・ねえ、ルカちゃん見なかった?」
「ルカ・・・さん?ねぇねと出かけていったのは見たけど」
「グミちゃんと?!!」
リリィちゃんの言葉に私は思わず食いついてしまった。
「え・・・う、うん」
「どこに行くって?!」
「さ、さあ・・・?そこまでは、聞いてないけど」
「そ、そっかぁ・・・」
びっくりしつつそう言ったリリィちゃんに私は肩を落としながら言った。
そっかぁ、グミちゃんとお出かけかぁ。
「大丈夫?」
「んー・・・。・・・ねえ、リリィちゃんは不安じゃない?」
「え?」
きょとんとするリリィちゃんはそれからちょっと上を向いて。
「ねぇねとルカさんでしょう?大丈夫じゃないかな?」
「・・・自信あるんだねぇ」
ふやぁと笑うリリィちゃんに私も笑顔になる。
「え、あの、自信あるっていうか!ルカさんはなんていうか、一途そうっていうか!ねぇねもだけど、その・・・!」
「うんうん。リリィちゃん一筋だもんね、グミちゃん」
あわあわするリリィちゃんが可愛い。
世間のクールなイメージとは大幅にずれてるぞー、リリィちゃん。
「ミクちゃん!」
「ごーめーんー!でも、リリィちゃんもグミちゃん、大好きなんだね」
「そ、そりゃ・・・」
「私がなぁに?」
「グミちゃん!」
「ね、ねぇね?!」
振り返ると意地悪そうに笑うグミちゃんがいた。
「ねぇねってば、お出かけじゃなかったの?」
「うん、まあね。他にも行ってみるって」
リリィちゃんにそう言って、それから私の方に顔を近づけてにこぉっと笑う。
え?え??
「愛されてるねぇ」
「ちょ、グミちゃん?」
「帰ろー、リリィちゃん!」
「え、ええ?!ねぇね?!!」
ぐいぐいとリリィちゃんの背中を押しながらグミちゃんが私にウインクをして見せた。
ど、どういうこと??
どういうことなの?!!
「・・・たーだいまぁ・・・」
「あら、お帰りなさい。ミク姉さま」
なんだったのかなぁとずっと悩みながら玄関の戸を開けると、微笑んだエプロン姿のルカちゃんが出迎えてくれた。
あ、今日は編み込みのお団子なんだ。
可愛いなぁ・・・。
・・・ん?
「ルカちゃん?!!」
「は、はい」
思わず大声を出す私にびく、と肩を揺らすルカちゃん。
「か、帰ってたの?」
「はい。遅くなってすみません」
ふわっと笑うルカちゃん。
あーびっくりした。
そういえば今日まともな会話ってこれが初めてじゃない?
「ううんー。何してたの?」
「今ですか?ケーキ作ってました」
「ケーキ?」
「ええ」
くすくす笑いながらルカちゃんがリビングの扉を開ける。
甘い香りがふわりと広がった。
「今年はネギケーキにしてみましたの」
「ネギケーキ!」
その言葉に私はテンションが上がる。
ルカちゃんのネギケーキ美味しいんだよねー!
・・・あれ?ケーキ?
なんでケーキ??
「やっぱり忘れてましたのね」
「へ?」
ぽかんとする私にルカちゃんが微笑む。
「ミク姉さま、お誕生日おめでとうございます」
お、誕生日・・・?
私の?
「ああ、そっか!」
「ミク姉さまってば」
3秒かかってやっとそう言った私にルカちゃんがくすくす笑った。
「それで朝からいなかったの?」
「ええ。何にしたらいいのか分からなくて。それで」
微笑むルカちゃんに、やっと合点がいく。
そっかぁ、避けてるわけじゃなかったんだぁ。
「ありがと、ルカちゃん」
「いえ。・・・あの、ミク姉さま」
「んー?な・・・」
に、と言おうとした私に、ルカちゃんが抱き付いてくる。
うぉおおおああああ何?!!何これご褒美?!!!
「・・・好き、ですわ」
「・・・!」
耳に聞こえる小さな声。
ああ、もう、ルカちゃんってば。
「うん、私も!私もルカちゃん好き!好き大好き愛してる!!!」
ひとしきりぎゅってした後、顔を見合わせあって笑う。
ねえルカちゃん。
私、今日が一番幸せだよ!!
「そういえば、どうしてお団子にリボンいっぱいついてるの?」
「お団子はカイト兄さまにやっていただいたんですけれど・・・。皆様に相談したらこれが一番喜ぶのでは、と」
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