夕顔、夕闇、君の罪(終プロSSS・CA

くる?
こない。
くる?
こない。
くる?
こない。

かちりと時計の針がその時を告げた。
・・・タイムリミットだよ、A弥。


「・・・どうしたの?」
「・・・え?ああ、別に」
首を傾げるA弥にオレはにへらと笑ってみせる。
あれから結局メールは来なかった。
A弥自身は何度もケータイを見ていたのに。
ほら今だってオレの隣でケータイをいじってるのに。
オレ宛の返事は朝を迎えてもついになかったんだ。
ねえ、どうして?
どうして返事くれなかったの?
「A弥さぁ」
「・・・。昨日の、メールだけど」
「え?」
オレの声を遮るようにA弥が言う。
・・・驚いた。
まさかA弥から言い出してくるなんて。
「何?」
「・・・何、はこっちのセリフ」
むっとした声でそう言ってA弥はケータイを閉じた。
「・・・何、あのメール」
「え?ああ。休みの日に遊びに行こうって、あれ?」
「・・・直接言えばいいのに」
「いいじゃん、たまにはー。で?なんで返してくれなかったんだ?」
へらへらと笑いながらオレは確信を付いた。
ねえ、A弥・・・。
「面倒だし。メール、してたんだよ」
「・・・へえ?誰と」
「他の人。君には関係のない人」
たんたんと告げられるそれは、A弥にとってはきっとなんでもないこと。
でも、オレにとっては。
「本当に?関係ない?」
「ないよ」
「B子とか、D音とかじゃないの?」
「しつこいなあ。違うったら」
嫌そうな顔でそう言うA弥。
そうか、二人じゃないのか。
でも、じゃあ誰?
オレより大切な人って、誰?
親友のオレより大切な人って、誰なんだ?
「・・・。君が言ったんだろ。愛想よくしろって」
「え?ああ。まあ」
突然言われたそれにオレは戸惑いつつ頷いた。
「クラスの人だよ。この前の噂についてメールきてたから、それで」
そう言って、またケータイを取り出すA弥。
歩きながらは危ないよ、と一応声をかける。
「・・・A弥」
「んー」
「メールの話さ。噂のメールには返信したんだ?」
「うん」
「オレのメールは返してくれなかったのに?」
「君には次の日に直接言えばいいかと思って」
「噂のメールだって同じだろ?」
「そういうのは早いほうが即効性があるんだよ」
ケータイの画面から目を離し、機嫌よく笑うA弥にオレはそうだね、と返すしかなかった。


(君より噂をとったんだ、彼は)
くすくすと笑う声が響く。
ああ、そうだね。
(結局君も噂には勝てないってことさ)
そうだよ、A弥は噂が好きだからね。
分かってたよ、分かってたさ。



でもオレに依存しないA弥なんて望んでなかった。
ずっと、オレの手を握ってくれると思ってた。
・・・A弥の目に他の人が映るなんて、思ってもみなかった。

夕顔の花が揺れる。
カバンの中に忍ばせたカッターナイフを握り締めた。
もし、これでA弥を傷つけたら・・・。
ねえA弥、君は俺のものになってくれるかな?

「・・・?C太?」
「・・・ううん、別に」
振り返る、A弥に笑ってみせる。


噂から、他の人から、悪いものから


・・・A弥は、オレが護るんだ。



(二人分の影が伸びる、そこを赤眼の猫が横切った



・・・沈む夕日の先、一人の少年はもう一人の少年を○○す自分を見たんだって)

ーーー

鬱的花言葉の続き。
ぷっつんきたC太読みたいです!ってリクあったのでー。

name
email
url
comment