ヤンデレC太×喘息A弥(終プロSSS・CA

学校からの帰り道、幼い頃遊んだ境内で。
「大丈夫?A弥」
久しぶりに持病である喘息の発作が出たA弥に、オレは水を差し出して聞く。
「・・・大丈夫」
一息ついたA弥がオレを見上げてそれを受け取った。
冷たい風が頬を撫でる。
「なあ、もっと暖かい場所に移動しないか?」
「・・・ん、でも家までまだ距離あるし」
大丈夫だというA弥だけど、やっぱり苦しそうだ。
何処か、せめて休める場所・・・。
「あ」
「?・・・何」
「いいから、来て」
不審な目をするA弥にオレは笑いかける。
確かこの辺に・・・。
「あった!」
「・・・。・・・なんで君がこんなもの」
「まあまあ」
灯篭の中から小さな鍵を取り出したオレにA弥が呆れたように溜息をついた。
返しなよ、と言うA弥を宥めて神殿の扉を開ける。
「・・・埃っぽい」
顔をしかめるA弥を「寒い外よりマシだろ」と言いくるめた。
確かに、喘息に埃はダメかもしれないけど。
「それに電波入らないし」
「ちょっとの間だからさ」
「・・・う、ん・・・。・・・っ、けほっ、ごほっ・・・っぅぁ・・・」
ひゅう、と器官が鳴る。
ずるずると座り込むA弥を支えて、オレは扉を閉めた。
「ほら、水」
「・・・今は、いい」
何度目かの発作の後、水を差し出すオレにそう言ってA弥が大きく息を吐き出す。
「ねえ、A弥。ずっとここにいない?A弥の喘息が治るまでさ」
「・・・ずっと?」
オレの言葉に少し考えて、A弥は短くやだ、と言った。
「ずっとなんて、バレるに決まってる」
「こんなところ誰も来ないよ」
「喘息がそんな短期間で治るわけない。・・・それに、寒いし」
「寒いなら暖房器具を持ってくればいいだろ」
「大体食べ物やお金はどうするの」
「オレがバイトするし」
「そういう問題じゃないでしょ」
「じゃあどういう問題?」
首をかしげると、それは、とA弥が言いよどむ。
オレがいれば何もいらないだろ?それ以外に何を求めるの?ねえ、A弥。
A弥はさ、オレが護ってあげるんだから。
だから何も心配いらないんだ。
そうだろ??



ねえ、A弥。
もし、もしも俺が此処から動けないようにA弥を傷つけたとしたら。
キミは溜息をついてその環境に身を委ねてくれるんだよね?




「A弥」
「・・・。・・・ずっとは、やだ」
ぎゅっと膝を抱えて、言外に発作が治まるまでだというA弥にオレは苦笑する。
・・・そういうとこ優しいよね、A弥は。
「好きだよ、A弥」
「・・・うるさ・・・。・・・げほっ、こほっ・・・ぅぁ・・・っ!」
突然の発作でぎゅうぅと苦しげに体を丸めるA弥を抱きしめる。
荒い息遣いと何度も唾を飲み込む音がすぐ近くで聞こえた。
「はっ、は、ぅ、は、ぁ・・・」
「・・・大丈夫、大丈夫だよ、A弥」
耳元で囁いて背を撫ぜる。
ほら、A弥はオレがいないとダメなんだ。
まったくしょうがないなぁ、A弥は。
震える細い肩にオレの上着を掛ける。
白いブレザーが光に反射してとても綺麗だ。
「・・・C、太・・・?」
涙目で見上げるA弥にオレは微笑んで。
柔らかな光に照らされるA弥を・・・オレは、××××た。



A弥、ねえA弥。
オレの他には何もいらないだろ?
此処にいれば大丈夫だから、ねえ。
発作が治まるまでここにいよう?
ふたりだけで。

喘息を治す薬も、医者もいらない。
オレがいれば、それでいいよね?

だから、A弥もオレの傍からいなくならないでよ。

ねえ、A弥!







(神秘に溢れる神殿、橙と黒の光が交差するその中で


少年は、もう一人の少年の歪み切った想いが壊れる音を聞いたんだって)

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