温泉/酒(へし燭SSS・ワンドロお題)

「え?温泉?」
きょとんとする光忠に、ああ、と長谷部は返した。
何でも主がくじ引きで温泉旅行を当てたのだという。
全員が行けるほどの余裕もなく、かといってそれを無下にすることもあるまいと主が行きたい人に配っていたのだ。
「ふぅん?」
「燭台切。お前はどうする」
「僕?・・・別にいいかな。旅館でゆっくりするより動いてる方が性に合ってるし」
「そう言うと思った」
にこりと微笑む光忠に長谷部は肩を竦める。
「え?」
「どうせお前は行かんだろうと思ったからな。俺も断った」
首を傾げる光忠に長谷部は言った。
代わりに、と続ける。
「主にあるものを頂いた。二人で使えとのことだ」
「そうなんだ。・・・長谷部くんまで断らなくて良かったのに」
「お前が行かんのに行ったところで仕方ないだろう」
「・・・もう」
くすくすと光忠が笑った。
そんな光忠の手を引き立ち上がる。
「長谷部くん?」
「来い」
こて、と首を傾げる光忠に長谷部は言って、襖を開けた。
大人しい光忠の手を引きある場所に連れていく。
「・・・離れ?」
「ああ」
不思議そうな光忠に頷いて長谷部はその部屋の奥にある戸を開けた。
「わぁ・・・!」
光忠が驚いた声をあげる。
扉の向こうには大きな風呂があった。
「本丸にこんな場所があったんだ・・・」
「ああ。ちょっとした旅行気分だろう?酒もあるぞ」
感嘆の表情をする光忠に手前の台所を指す。
目を見開きそれからくすくすと笑う光忠の腰を抱いた。


いつもと変わらない空間も


少しの出来事で特別なそれへと変える




貴方と二人、杯を傾けながら雪見風呂

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