三つ巴(光忠♀ワンドロ・へし→光♀←くり

何の時だったかは忘れた。
主の所に呼ばれた時だったか、戦闘についての会議をしている時だったか、夕飯の席ではなかった気がする。
ぼんやりと座った光忠を振り返った瞬間、その隣に座ったのは大倶利伽羅だった。
伊達刀の同志。
光忠が大倶利伽羅の事を弟の様に可愛がっていたのは知っていた。
人となれ合う事を嫌う大倶利伽羅が光忠のそれを甘んじて受けていたのも知っている。
だが。
「っ」
振り向いた俺が見たのは大倶利伽羅が光忠の肩を抱き寄せたところだった。
突然だったのだろう、少しよろけ、「もう」と苦笑いする光忠に奴は何かを囁いていた。
・・・少し遠かったので何を言ったかは分からないが。
肩に置いた手をたゆんと揺れた光忠の胸に滑らせようとしたのを見・・・流石に立ち上がる。
大股で近づき、二人を見下した。
「・・・。大倶利伽羅」
「なんだ?」
光忠の肩を抱いたまま大倶利伽羅が俺を見上げる。
あくまで離さないつもりか。
「あ、あの、長谷部くん?」
おろおろと俺を見上げる光忠。
それから「ね、倶利伽羅、もういいでしょ」と大倶利伽羅に向かってへしょりと笑った。
「何の話だ」
「お前には関係ない」
「・・・何だと?」
「ちょっと、倶利伽羅!長谷部くんも!」
あっさり言う大倶利伽羅に目くじらを立てたところで、もう!と光忠が声を上げる。
仕方がなく黙り込めば大倶利伽羅が明らかに勝ち誇った笑みを浮かべた。
・・・くそっ。
「・・・光忠、少しいいか」
「?何、長谷部くん」
感情を飲み込み、光忠を呼び寄せる。
きょとりと目を瞬かせ、立ち上がって俺の元に来た。
光忠に書類を見せ乍ら大倶利伽羅を振り返る。
急に引き剥がされた奴は目に見えて不機嫌になっていた。
少し気分が良い。
しかし。
前屈みになると大きな胸が誇張されるのに光忠は気付いていないのだろうか。
「おい、光忠。気を付けろよ」
「え?」
下からの声に光忠が振り向く。
「長谷部、お前の胸ばかり見てるぞ」
「え、え?!」
「っ、大倶利伽羅、貴様!」
焦ってばっと胸を隠す光忠と大声を出す俺ににやりと笑う大倶利伽羅と。
「・・・。貴様だって今光忠の尻を見ていただろう」
「・・・俺が何を見ようが俺の勝手だ」
俺の言葉にぷいとそっぽを向く。
「く、倶利伽羅・・・?!」
紅い顔で大倶利伽羅を睨む光忠。
「なんなの、もう!二人して!!」
頬を膨らせる光忠が可愛くて。
はあと溜息を吐く声が揃った。
大倶利伽羅が立ち上がって光忠を引き寄せる。
「わっ」
俺が光忠の肩をぐっと抱く。
「ふえ?!」
「共同戦線を結ばないか、大倶利伽羅」
「慣れ合うのは嫌いだ。・・・が、致し方ないな」
「ちょっと、何、何の話、長谷部くん、倶利伽羅・・・?!!」
「俺の部屋でいいか、長谷部」
「ああ。問題ない」
ひょいと光忠を抱き上げ、俺に確認をとる大倶利伽羅に頷いて見せる。
「根回しをしてくる。先行ってろ」
「分かっている」
「二人とも、ねえ何の話を・・・っ!・・・倶利伽羅、降ろして、僕を降ろしてよ!長谷部くん助けて!!」
じたじたと暴れる光忠が俺に助けを求めてくるがさらりと無視した。
後ろから「落ちるぞ」という声が聞こえてくる。



大倶利伽羅は倒すべき敵だ。


しかし今は二人、光忠に愛を囁くのも悪くないのではないだろうか。



(ずるずる続く、彼と俺と彼女を巡る三つ巴戦線)

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