やくそく(ねんへし燭ワンドロSSS

ねん光が俺の部屋の窓辺に正座し、空を見上げている。
その表情はどこか悲しそうだった。
ねん光がこうして空を見上げるようになってもう1週間だ。
食事も取らず睡眠も取らず…いつまでこうしているつもりなのか。
「ねん光」
「っ?!」
声をかけるとびくんっと、肩を震わせてこちらを向いた。
振り向いた表情が少し嬉しそうで、心が痛む。
「…あからさまにがっかりするな」
「…」
目線を下げたねん光の髪を撫でてやった。
ぱたぱたと手を振るが何処か元気がない。
「ねんくんは、寂しいんだよね」
上から降ってきた声に振り仰げば顔を出した光忠が小さく笑いながら俺の隣に座り込んだ。
「…」
光忠の言葉に、ねん光はしゅんと目を伏せる。
「まだ1週間だろう」
「もう1週間、だよ」
俺の言葉に光忠が訂正した。
1週間…ねんが、ねんどろいど長谷部がいなくなって1週間経った。
ねん光はいなくなった日から一途にも俺の部屋で待ち続けている。
「約束、したんだよね」
笑って光忠が言うのにこくりとねん光が頷いた。
約束…な。
「なら信じて待っててやれ。あいつも出づらいんじゃないか?」
「そうだね。きっとねんへしくんは約束を破るような子じゃないよ。ね?」
俺たちの言葉にふるふると首を振る。
思わず光忠と顔を見合わせ、ため息を吐いた。
…まったく、妙な約束を取り付けよって。

言の葉は魂を縛り付ける。
約束は思いを縛り付ける。

ねんの約束はねん光の思いをその場に縛り付けた。

『みつ、やくそく。おれがもどるまでここでまっていてくれ。おれはぜったいかえってくるから』


不確かな約束を、彼は信じて待ち続ける。





「…死亡フラグみたいなの立てていったが、あいつ、政府の元から正式に下りてくるための申請に行ったんだろう?大袈裟にもほどがある」
「長谷部くん、しっ」

(ねんが帰るのは9月!)

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