汝、人狼成り也?~一日目~(カイコク総受け風味)

さて、と白髪の少女…ユズが周りを見渡す。
いよいよ始まるのか、と全員が息を呑んだ。
「話し合いを進めていくわけだが…あまりにも情報が少ない。かといって役職はまだ明かさない方が良いだろう」
「な、なんで役職を明かしちゃいけないんですか?」
ユズのそれにおどおどと最年少でもあるヒミコが聞く。
「人狼が襲うのは日に一人と決まってる。なんでかは知らないが…人狼にも考えがあるんだろう。対してこちらも処刑出来るのは日に一人だ。…役職を明かしたとして村にとって重要な役職持ちを人狼にくれてやるわけにはいかないからね」
その質問に、ユズがにこりと笑って答えた。
なるほど、とヒミコが頷く。
「つか、なんで処刑は日に一人なんだよ?」
すると今度は目つきの悪い少年…アンヤが疑問を呈した。
「例えば二人処刑し、二人ともが村人なら村にとって損害になる…そんなことも分からないのか、貴様は」
「んだと、コラ!!」
ギロリと睨むマスクの少年…ザクロにアンヤが噛み付く。
「テメーマスクなんかしやがって怪しいなぁ?オメーが人狼なんじゃねぇの?」
「…なんだと?」
アンヤのそれにザクロが立ち上がった。
「アンヤ!」
「もー、ザクロ?!」
「元気だねぇ…。…喧嘩も良いが、そういうのは無事に人狼を倒してからにしてくれねぇか?」
シンヤとサクラがそれぞれを止める中、ゆわりと微笑むのはカイコクと名乗った青年である。
その、最もな意見に二人は大人しく黙り込んだ。
どうやらこの二人は性格が合わないらしい。
「あの、どうして投票は薔薇の花なんでしょうか?」
はい、と手を挙げたのはアカツキだった。
ああそれか、とユズが言う。
「処刑に使われる毒にこの薔薇が使われているからだよ」
「なっ、なんでそんなこと…」
あっさりと答えたユズに怪訝そうに聞くのはカリンだった。
「当たり前さ。…この毒薬を完成させたのはボクだ」
その答えに全員が目を見開く。
「なっ」
「言ったろう?ボクはしがない探求者だと」
ふわりとユズが笑い風に白衣をたなびかせた。
「ボクは姉と小さな研究所で化学者をしていてね。毒を集めるのはまあボクの趣味の一環でもあったのだけど、この度ボクが精製した薔薇の毒が狼狩りに利用される運びになったわけさ」


「人狼よりも狂信者な感じもするけどな」
「それでも、人狼寄りな事は変わりないでしょう?」
「ピエロを演じるのはボクの得意分野だけれども、命がかかってあるというのに危険な橋は渡らないさ」

「自分の命も危なくなるようなものを作ると思うのかい?ボク自身が?」
「作ったからこそその対象から除外されるように仕向けてる、ってのはあらァな」


「第一印象から決めていた。…貴様が人狼なら怖いと思う。俺は貴様に入れよう…鬼ヶ崎」
「人狼だから怖いんじゃねぇのか?」
ザクロのそれにカイコクが小さく笑う。
それに続いたのはユズだった。
「だがボクも同意見だ。君は真実が見えない。ねぇ、カイさん。君みたいな人が人狼なら…村が滅びる理由も頷けるだろうな」
「褒め言葉として受け取っとくぜ…路々さん」
薔薇を受け取りながら綺麗にカイコクが笑む。


くすりと、だが寂しそうにユズが笑う。
「自分で作った毒を飲み、最期を迎える…まあ、人狼に殺されるよりもボクらしい結末と言えるのかにゃ?」
白衣を翻し、瓶を手に取ったユズは…そのまま一気に煽った。
「良い結末になることを祈っているよ、諸君」
柔らかく笑んだユズが、倒れる直前「…おねぇちゃん…」と呟いた事は…誰も、知らない。


夜を迎え、それぞれが眠りについた。
「…あの子を、護ってあげなくちゃ」
一人、テントから這い出た人物が、小さく呟く。
投票を終え、一番気になった
ふと自分の上が暗くなっている事に違和感を覚え上を見る。
そうして、息を呑んだ。
「そんな、まさか!あんた達が人狼だなんて!」

name
email
url
comment