RPGシェイプの海 おまけ(ザクカイ←マキ)

「…カイコッくん」
「…?どした、逢河」
呼びかけるマキノに、カイコクがきょとんとした顔をする。
先程終わったゲームで負傷していた彼の様子を見に来たが…意外にも大丈夫らしかった。
不思議そうな表情のカイコクは痛みを我慢している様子もない。
「…大丈夫…?」
「…大丈夫、って…何が」
「…怪我……」
マキノのそれに首を傾げるが、ああ!と彼はすぐに笑った。
「仮想空間での怪我は現実にゃ反映されねぇんだと。…心配してくれてありがとな」
そう微笑む彼にふるふると首を振る。
無理している素振りはないが…マキノはどうしても気になった。
「…見せて」
「へ?」
「…傷…見せて」
ひた、と服の上から掴まれていた場所を触れば彼は困惑した顔を見せる。
「何もねぇんだぜ?逢河」
「…あるかも、しれない」
「本人が言ってるってぇのに?」
くす、と笑うカイコクにマキノはじぃっと見上げた。
意外と引かないマキノに、どうやらカイコクは折れたらしい。
はぁ、と溜息を吐き出し、頭を掻いた。
「分かった分かった。脱いで見せりゃ…」
「鬼ヶ崎!!!」
着流しの袖から腕を抜こうとする彼を止めたのはザクロの声で。
「…忍霧?…ぉわっ」
目をぱちくりと瞬かせるカイコクの手が引かれる。
「マキノくんが心配するのも分かる…が、本当に何もないんだ。信じてやってくれないだろうか」
「…。…分かった」
彼を引き寄せ、そう言うザクロにマキノは頷いた。
ありがとう、とザクロは言うとカイコクの手を握ったままその場を立ち去る。
マキノはそれをぼんやり見送った。
「全く貴様は無防備過ぎるんだ!」
「…逢河だろ?心配してくれてんじゃねぇか」
「マキノくんはそうだろうが、外に出ればそんな奴ばかりではないのを理解すべきだとは思わないか?」
「へいへい。俺だってなぁ、別に誰彼構わず信頼するわけじゃあ…」
彼らの声が遠くなる。
何故、自分は大丈夫だと思うのだろう。
外の、【そんな奴】と同類でないと誰が言えるだろうか。
存外優しくて、自己管理にうっかりしている彼に、恋をしない…理由は?
「…」
そういえば、と思い出す。
先程のゲーム、マキノは術師だったということを。
術師が術にかかってしまうのも、またおかしなものだな、と思った。

(術師もかかる恋の魔術。

さてその術の対象者は如何に?)

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