縄の日ザクカイ

「そういえば、知ってました?今日は縄の日なんですよ!」
そう元気よく言ったのはアカツキであった。
だが、それに食いつく者はおらず…ユズがいれば食いつきもしようが、そも、ここは男子湯だった…ありゃ、とアカツキは首を傾げる。
「興味ありません?縄の日」
「…なんでだよ。大体、縄とかそんな使わねぇじゃん」
「えー、ありますよぅ!縄跳びとか」
「体育2のくせに」
「…いやぁ、それを言われると…」
アンヤの呆れたようなそれにアカツキは頭を掻いた。
そんな二人を見ながらザクロはザバッと音を立て立ち上がる。
「もう上がるんですか?忍霧さん」
「ああ。用事を思い出した」
四重跳びのカウント方法まで話が飛んでいた彼らを邪魔しないようにしようと思ったが気付かれてしまい軽くそう答えた。
深追いされる前にさっさと風呂から出て身体を拭き服を着る。
急がなければ、と動作を早めた。
早くしないと日付が変わってしまう。
足早に向かうは彼の部屋。
「おい、鬼ヶ崎!」
その扉をノックをし、開けろ、と催促する。
「…。…今日の鬼ヶ崎は閉店でぇ…」
「昨日も言ってただろう!良いから開けろ!」
くぐもった声にも負けず、ノックをし続けた。
暫くし、迷惑そうな顔をしたカイコクが顔を出す。
「…で?人がせっかく寝ようってぇのに何事…」
「俺に縛られてくれないだろうか!」
「……はい?」
ザクロの食い気味なそれに、彼は一瞬目が点になった。
「…お前さん、今なんて…」
「いや、だからこの赤い荒縄で縛られてはくれないかと」
「…具体的な説明どーも。で?なんで急にそんな」
「今日は縄の日らしい。それに因んで」
「因むな因むな」
熱く語ろうとするザクロをカイコクが遮る。
それからあからさまに溜息を吐き出した。
「お前さんの真っ直ぐなトコは嫌いじゃねぇが、今発揮されんのは違うと思うぜ?」
「違うのか」
「違うな。大体、俺が正面から来られて良いですよって言ったことあったかい?」
こてり、と彼が首を傾げる。
なるほど、そう言われてみればないかもしれないな、と思いながら…ぐい、と引き寄せた。
マスクを外し、深いキスをする。
「んんぅ?!…んぁ、ふ…は…ぁんっ、ぁ…」
次第に蕩け、翻弄されるカイコクの手を縛った。
「…ぅ、あ……っ!おし、ぎり…っ!」 
「やはり貴様には赤が良く似合う」
睨む彼に見せつけるように赤い荒縄にキスを落とす。
そう、彼には赤い荒縄がよく似合うと思ったのだ。
曇りのない黒の着流しの下に真白の肌を隠す彼には。

荒縄の如くザクロに縛られたカイコクは…もう、逃げられない。
ギシリと軋む縄の音と共に、甘い夜が始まりを告げた。

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