機械仕掛けの神様なんてクソくらえ(彰冬)

…かんっぜんに選曲ミスった。
「…大丈夫か?彰人」
心配そうに覗き込むオレの相棒…今の所は、だが…の、青柳冬弥に突っ伏したまま手を振る。
「飲み物、いるか?」
「…んじゃあブラック以外で」
「…分かった」
小さく笑った冬弥がパタパタとスタジオから出た。
それを見送りながらオレは自分が持ってきたはずの楽譜を手に取る。

Anti the EuphoriaHOLiC

そう銘打たれた楽曲は、とにかく速いし曲調もコロコロ変わるしで歌うのがかなり難しいそれだった。
普段やらないジャンルを、と探してきたはいいが完全に間違ったな…。
つか、作者は何を思ってこの曲を作ったんだ?
Фはセカイとは読まねぇだろ、普通…。
「…これで良いか?」
「…ん、サンキュ」
缶ジュースを戻ってきた冬弥から受け取る。
「冬弥は大丈夫か?」
「…俺、か?俺はまあ…」
「無茶すんなよ」
困った顔の冬弥にそう声をかけた。
こいつは感情を表情に出さないからな。
まあそこが冬弥らしいっちゃあらしいんだけど。
それに、前より分かりやすくなったし。
「彰人が選んだ曲だろう?…難しくても、やり遂げてみせるさ」
冬弥が小さく笑う。
…オレは、こいつのこういうトコが好きなんだよなぁ…。
オレを、真っ直ぐに信じてくれる。
なんだかんだ言いながら着いてきてくれる。
だからオレももっと高みへ行けるんだ。
あの、喧嘩で、再確認した。
オレは…こいつと、冬弥と歩いていきたい、と。
「辿るべき道標(ひかり)はその胸に――、か」
「彰人?」
きょとんとした顔で冬弥がこちらを向く。
何でもねぇよ、と答えて立ち上がった。
よく分かんねぇ歌詞の羅列で、唯一共感したそれ。
辿るべき目標(ゆめ)は、オレたちだけのもの。
オレたちはオレたちだ。
決めるのは他の誰かじゃねぇ。
カミサマなんていらない。
デクス・エクス・マキナなんてもっとごめんだ。
オレは、歌と冬弥がいりゃあ…それでいい。
「練習再開すっぞ!!」
「…ああ」
呼び掛ければ、ふわり、と冬弥が笑う。
中々見れない、柔らかなそれで。
…冬弥の笑顔のためなら、オレは…バッドエンドも書き換えてやるよ。


「ぜってぇ嫌だ。誰がんなふりっふりの服着るかよ、司センパイじゃあるまいし!」
「…フリルと言っても腰のところだけだろう。きちんとした男性用衣装だぞ?」
「彰人はさあ、ワガママだと思うなあ」
「…レン」
「ここのレンを見てよ、まともな衣装が二割しかない」
「…。…オレが悪かった」

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