隔週ワンドロ/ウインク・指ハート

「あははは!冬弥くんかわいー!!」
「へぇ、器用そうに見えるけど案外不器用なんだね、冬弥って!」
「…何してんだ?」
楽しそうな声と知っている名前に思わず教室を覗く。
1-Aの教室には杏と瑞希、そして何故だか冬弥がいた。
…彼は隣のクラスだったはずなのだが。
「…彰人」
「あ、彰人だ」
「ねぇねぇ弟くん!ファンサやって、ファンサ!」
「だぁから弟くん呼ぶなっつー…ファンサ?」
瑞希がにこにこと強請ってくるそれに、文句を言おうとし…思わず首を傾げる。
何を唐突に。
「あはは。実は私の友だちがアイドルでね。最近会った時にファンサって奥が深いんだよって言うからさぁ」
「杏たちのグループってパフォーマンスはするけどファンサとかはしないんでしょ?だからやってほしいなって思って!」
「…流石、顔が広いな…。んで?何やりゃいいって?」
杏がけらけらと笑うから、なるほど、と思いつつ聞いた。
やってはくれるんだ、と杏が言い、そうだなーと瑞希が上を向く。
「んじゃー、指ハートとウインク!」
「へーへー」
ありきたりなリクエストに彰人はパチンとウインクをし、人差し指と親指でハートを作った。
別段そこに恥もくそもない。
だが彼女たちは不満だったようだ。
「うわー、期待を裏切らないよねー弟くんは」
「卒無くこなす感じ?なんか腹立つ」
「どうしろってんだよ!!」
瑞希と杏からの散々な言われように彰人は突っ込む。
元より結果は求めていないのかもしれないけれど。
「やっぱりさぁ、冬弥くんみたいなのを期待しちゃうよねぇ」
「はぁ?冬弥ぁ?」
ははん!と何故かドヤ顔の瑞希が冬弥を引き寄せる。
「…暁山」
困惑顔の冬弥に、杏が、やってやってよ!とせっついた。
「…またやるのか?白石」
「いいじゃん!あれ、可愛かったし!」
「そうそう!あれは可愛かった!あざとさが無いのがまた良いよね」
「…俺は、彰人みたいに格好良くは出来ないんだが…」
「だーからぁ、それがいいんだってばー!」
もー!という瑞希と、「格好良いって、良かったね、彰人」とにこにこ…にやにやだろうか…する杏。
何だコレ、と思いつつ二人が言うそれが気になった。
冬弥のファンサとはどんなものだろうか。
彼も、彰人が止めないのが分かったのか小さく息を吐いた。
「…こういうのは苦手なんだが」
そう言いながらも冬弥はずいとこちらが寄ってくる。
そうして。
「…んっ」
「ん?!!」
ウインクが出来ないのだろう、ギュッと両目を瞑り、両指で小さなハートを作った。
「…あ、彰人…?…っ?!!」
「…あー…あれは刺さったみたいね」
「にしても喋らないのはどうなのさぁ弟くん」
「…うるせぇ」
驚く冬弥を抱きしめる彰人に、ニヤニヤと杏と瑞希が言う。


周りがどんな風に言おうが

彰人にとっては最大級のファンサ!


(まあ誰にも見せてはやんねーけどな!)

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