ザクカイ♀️にゃんにゃんにゃん

元々彼は猫みたいな人だった。
それがどうして。

「貴様はほっんとうに面倒事しか起こさないな?!」
あからさまなため息に、カイコクは迷惑そうな顔をする。
別にいいじゃねェか、と言うその声は普段よりも高かった。
「…レディには優しくするもんだぜ?忍霧」
「貴様、自分でそれを言うか」
にこ、と妖艶にカイコクが笑む。
…そう、彼は彼女になってしまったのだ。
猫耳に尻尾までつけて。
普段から無茶ばかりする彼は、お仕置きです、とパカから薬を浴びせられ、その所為で女体化してしまったらしい。
耳と尻尾は副作用のようで、ユズ曰く「一日大人しくしてたら戻るさ」とのことのようだ。
「しかしまあ、俄には信じがたいな」
「…。…触ってみるかい?」
「結構だ!!」
ザクロのそれにカイコクが妖しい笑みを浮かべる。
即座に否定するザクロに彼女は楽しそうに笑った。
「そっちじゃねぇよ、ムッツリスケベ」
「…なっ、誰がムッ…!…は?」
言い返そうとしたザクロはぽかんとカイコクを見る。
ん、と差し出していたのは彼女の頭だったからだ。
「猫耳。自分じゃどうなのかいまいち良く分からなくてねぇ」
「…ああ、そういう」
「どういう意味だと思ったんだい?忍霧」
「…っ」
可愛らしく笑うカイコクに返事を詰まらせながらザクロは手を伸ばす。
ふわ、と触れたそれは確かに猫のそれだった。
「…んっ」
「…存外柔らかいな。少し冷たい。やはり偽物なのか?」
「…忍霧、あの…触られた感覚は、ある…から」
すりすりと指の腹で擦っていれば彼女はふる、と、震え、こちらに訴えてくる。
すまない、と言いながらもザクロは触るのをやめなかった。
「…ぅあ…忍霧…っ!」
「尻尾はどうなっているんだ?」
「ひっ?!」
つい、と引っ張った途端、彼女は小さな悲鳴を上げ、その手を逃れてしまう。
「…も、いいだろぅ?」
「自分から触らせておいて、か?少し卑怯では?」
「…う、るせ…っ」
はぁ、と熱い息を吐き出す彼女の、たわわになった胸が揺れた。
誘っておいて、それはズルくないだろうか。
「…鬼ヶ崎。お前から誘った、そう記憶しているが?」
「…ぅ…。お前さんっ、女子が苦手だろう!」
「それがどうした?」
疑問を返せばカイコクは大きく目を見開く。
どうやら少し怯むと思っていたようだ。
「俺だってこの環境に馴れた。それに、好きなやつの姿に男も女もないだろう?」
「…ぅ、そりゃあ…そうかもしんねぇ、けど」
「ただ、猫耳を触らせてくれるだけで良いんだ。…なぁ、鬼ヶ崎」
たじたじになった彼女の耳に囁く。
どうやら普段以上に敏感らしい…猫耳に。
「…触らせてくれないか?」
「…っ!!わかっ、たから!!その囁くのはやめてくんなぁ!」
可愛らしい声を上げるカイコクにザクロはわかったと距離を取った。
おずおずと傾けられる頭に笑みを漏らす。
「…手加減」
「分かっている」
睨む彼女に短く答えて手を伸ばす。
もちろんそれが守られるはずもなく、くったりした彼女に、『責任』を取らされる事になったのは…また次、だ。


彼は猫に似ていた。

それは彼女になったとて。

…いや、彼女になった方が甘えたがりな猫により近くなった…というのはマスクの下の内緒の話!

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