類冬ワンドロ・図書室/スマホ

図書室は私語厳禁です。

冬弥からそうスマホに連絡が入り、類はおや、と笑った。
突然、これだけを送られたら、普通の人は訝るだろう。
だが、類は違った。
笑みを浮かべ、スマホにそっと口付ける。
だってこれは冬弥の『本音』であるから。
これは二人だけの秘密の合言葉だ。
冬弥が類に会いたい時の。
ストレートに会いたい、と言うのが恥ずかしいと彼が言うから、ならこうしようと合言葉を決めたのだった。
その方が恥ずかしいとおもうのだが…彼が良いのなら良いだろう。
どんな顔をしてこの合言葉を打ったのか、気になるところではあるけれど。
ちなみに、類から冬弥に会いたい時のメッセージは『花壇に入ってはいけないよ』だ。
「…ふふ」
メッセージを見返して類は小さく笑った。
まさか、合言葉を決めたは良いが本当に冬弥からメッセージが来るとは思わなかった、というのが本音である。
短く、飾りのない文章。
ただ、そこに様々な思いがこもっていることを、類は知っている。
今すぐ駆け出したい気持ちをぐっと堪えて返信画面を開いた。

君が伝える、スマホへのメッセージ。
彼はきっと図書室で待っているのだろう。
類からの、返事を。

さてどうしようかな、と類は小さく微笑んだ。
類が送る、その返事。
それは…ー。

name
email
url
comment