司誕生日

お誕生日おめでとうございます。
そう言ってくれた可愛い恋人に司はとびきりの笑顔を向けた。
やはり、いくつになっても誕生日を祝われるというのは嬉しいものだ。
特に、恋人からこうして誕生日を祝われるのはなかなかに【クル】ものがある。
「ありがとうな、冬弥!とても嬉しいぞ!」
「…何かプレゼントをお渡ししたかったのですが、思いつかなくて…。何が、良いですか?」
別に良いのに、と笑ってみせるが、彼は真面目な質だ、そういう訳には、と眉を下げた。
こうやって祝ってくれるだけでも十分嬉しいのだけれど。
だが、存外頑固な冬弥のこと、言い出すまでは引かないだろう。
ならば。
「えっ、うわっ」
「なら、今日一日冬弥の時間をオレにくれ!!」
彼の腕を取り、ぐい、と自分の元に引き寄せる。
灰鼠色の目をまん丸くさせる冬弥に笑ってみせた。
「…えと、俺の時間で良ければ…?」
「本当か?!」
戸惑ったような冬弥に、司は顔を輝かせる。
思わず抱きしめてから、少し離れて彼の肩を持ちこの後のことを話し始めた。
「ならば早速デートをしよう!駅前にあるカフェのコーヒーが美味いと聞いたからな、一度行ってみたかったんだ。それから古本屋に行くだろう?最後はワンダーステージを借りてオレのショーを…」
「ま、待ってください!」
今日のデートプランを話していた司を、冬弥が慌てたように止める。
どうしたのだろうか?
「む、どうした?冬弥。やはり本は古本より新書か?」
「いえ、どちらもそれぞれの良さが…って、そうではなく!」
珍しくあわあわする冬弥を可愛いなぁと見ていた司だが、彼の困ったようなそれに今度は司が驚いてしまった。
「…これでは、俺が誕生日のようです」
「何?」
「ですから、俺が嬉しいと思うことばかりで…」
「嬉しいか!嬉しいんだな!」
「…え?は、はい」
不思議そうな冬弥に、司はうんうん!と笑ってみせる。
そうして。
「オレはな、冬弥が笑顔になってくれるのが一番嬉しいんだ」
「…!!」
「オレの生まれた日を祝ってくれるというのであらば、オレが一番欲しい、冬弥の極上の笑顔をくれないか?」
「…司、先輩……」
その言葉に、冬弥が蕩けるような笑顔を見せた。
それはそう。
司が願った幸せの証。


(なんといったって、


今日はオレが主役のバースデー!!


欲しいものがあるなら自分でプロデュースするのも、またスターの役目、だからな!)

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