メイドの日

本日、5月10日はメイドの日だ。
まあだからって、何故こんな。
「…鬼ヶ崎」
「…なんでェ、忍霧」
低く名前を呼ぶザクロに、きょとりと彼女が首を傾げる。
メイドの日ですよー!と何故だがアカツキが朝から楽しそうだったのは知っていた。
楽しそうついでにメイド服を着ていたのも、また。 
何故彼がメイド服を着ているのか、と突っ込むのは野暮だろう。
こちらにさえ被害が及ばなければ良い。
…そう、思っていたのだけれど。
「…貴様のその服について聞いても良いだろうか」
「?見て分かんねぇかい?」
首を傾げたカイコクが袴部分を小さく持ち上げる。
分かるから聞いているのだが、という言葉をザクロは頑張って飲み込んだ。
「女給だ。和装メイド、の方が分かりやすいかい?」
ふわりとした白いエプロンを舞わせ、カイコクが笑う。
花のように美しい笑顔に詰まりかけ、ぶんぶんと首を振った。
「何故貴様がそんな格好を…」
「普段より肌は晒してねぇだろう?それとも何かい?忍霧は見えないほど興奮する、ムッツリタイプ…いや、ムッツリだったな、お前さん」
「あのな」
煽ろうとしてカイコクはふむ、と何かを考える素振りをする。
あまりにも心外ではなかろうか。
…まあ、ザクロ自身、それを否定する術は持っていないのだけれど。
「まあとにかくあれだ」
「…なん…?!」
急に押し倒され、ザクロは目を見開く。
にこっと笑った彼女の頭で、ヘッドドレスが小さく揺れた。
「頑張ってるお前さんにちょっくらサービスをってな。なぁ、旦那様?」
ご機嫌に笑うカイコクに、ザクロは言葉を失い…そして。
「…後悔するなよ」
「誰が」
小さく笑い、マスクを下ろす。
それに応えてみせた彼女にキスを落とした。



知っているかい?
女給は純喫茶だけにいた訳ではないということを!
【そういう】店でサービスをする女給が確かにいた事を!

(そういう意味では、本来のメイドより不純なのかもしれないね?)

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