セカイの衣装バグが起こりまして メイド編

セカイにはバグがある…らしい。
想いの持ち主の体調不良だったり、音楽機器の不調だったり、その辺は曖昧だ。
だが、唐突に、意図せずに起こる。
それは、ほら、今回だって。


「…で??」
彰人は不満げな顔でバーチャル・シンガーの鏡音レンを見つめる。
あはは、と笑う少年は随分と窮屈な服を着ていた。
バトラーっていうんだよ、とこはねがにこにこしていたっけか。
今回のバグはどうやら彰人の体調不良が原因だったようで、あまり強く言えなかった。
だが、このバグは。
「…せめて全員バトラーにしとけよ…」
「だって、揃ってるからさぁ?」
はぁ、とため息を吐く彰人にレンが言う。
まさかの衣装がこれしか着る事が出来なかったのだ。
他の人もそうなのかと取り敢えず用意してあったバトラー服を着…着なければ扉が開かなかったのだ…、外に出た彰人が見たのはある意味地獄だった。
やっほー!と手を振る杏がメイド服、その隣にいたこはねがバトラー服だったのはまだ分かる。
だが、何故。
「…なんで冬弥がメイド服なんだよ…!」
渾身の叫びを彰人は漏らす。
ふわりと閃くスカート、頭の上には律儀にヘッドドレスが乗っていて。
「いーじゃん、冬弥。可愛いよ?」
「そーいう問題じゃねぇんだよ」
「彰人、オレは別に歌が歌えれば構わないぞ?」
「オレが構うんだよ」
レンと冬弥が口々に言う。
それに、はぁあとため息を吐きながら返した。
彰人たちがパフォーマンスするダンスは激しいものが多い。
足を蹴り上げたり開いたり。
それをこのスカートでするかと思うと頭が痛くなった。
…今でさえ頭が痛いというのに!
「つーか、冬弥はなんで構わねぇんだよ…」
「?服装など、歌うのに関係ないだろう?」
純粋に首を傾げる冬弥に彰人は、そーいうトコ、と息を吐いた。
こちらがどんな気持ちでいるか、少し考えてほしい、と思う。
「彰人?」
冬弥が首を傾げた。
ヘッドドレスがふわりと揺れる。
「おっまえなぁ…!」
はぁあ、と息を吐き彼の手を掴んで、路地裏に連れ込んだ。
壁に押し付けてキスをする。
するりとスカートに手を入れれば冬弥がびくりと体を跳ねさせた。
胸元のリボンが揺れる。
「ん、ふぁ…!…っ、あき…!!」
「…ま、たまにはアリかもな」
珍しく怒れる冬弥に彰人は小さな声を漏らした。


可愛いメイドと半人前のバトラーとの秘密の逢瀬、なんて、な!!



「あ、彰人くん!冬弥くん!!聞いてよ、突然服が変わっちゃってさぁ…」
「…KAITOさん?!」
「いや、あんた、それ」
「KAITO!!メイド服のままうろうろしないでって、オレ言ったよなぁ?!!」

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