アカカイバースデー

入出、と言われてアカツキは振り返る。
そこにはふわふわと手を振るカイコクがいた。
「カイコクさん!」
「よっ」
パッと表情を明るくし、駆け寄ると彼はいつも通り飄々と笑みを浮かべる。
「どうしたんですか?今日はもうゲームは…」
首を傾げればカイコクはキョトンとした後くすくすと笑った。
「なんでぇ?去年は自分から強請ったくせに」
「へ?」
「…誕生日、だろ。お前さん」
綺麗に微笑む彼に、アカツキは思わず、あ、と声を漏らす。
そういえばそうだった…ような。
「忘れてたな?」
「…忘れてましたねぇ…」
楽しそうなカイコクに、ぼんやりと返した。
カレンダーもないゲノムタワーにおいて、誕生日なんて忘れがちになりそうなのだが…どうやらカイコクは覚えていたらしい。
存外律儀なのだなぁ、と思っていたアカツキの、目の前が暗くなった。
え、と思っていれば、柔らかい感触が唇に触れる。
「…お誕生日おめっとさん、入出」
「…!ありがとうございます!」
花が咲くようなきれいな微笑みと彼からの珍しいデレに、アカツキはそれしか言えなかった。
あまりに驚きすぎたというのがある。
「?嬉しくなかったかい?」
「嬉しかったです!嬉しかったですよ、もちろん!」
不思議そうなカイコクに、アカツキは慌てて言った。
せっかくの誕生日プレゼントなのに、喜んでないと思われては堪らない。
「…少し、ビックリしてしまって。プレゼントを味わえなかったのでもう一回お願いできませんか?カイコクさん」
精一杯のキリッとした顔にカイコクは目を見開き、それから楽しそうに肩を揺らした。
断られるかと思えば彼は「しゃあねぇなぁ」と言う。
存外、アカツキに甘いのだ、カイコクは。

「…お誕生日様に、特別でぇ」
ふわ、と微笑み彼が近づく。
アカツキは、そっと目を閉じた。

name
email
url
comment