イチャイチャ10題・抱き寄せる(みつぼし

「おっはよーございまーす!!」
いつも通り、いつもの様に、いつもの時間にスタジオの扉を開ける。
わやわやと作業してるスタッフさんに挨拶してると奥の方で共演の二人を見つけた。
「はよー、相変わらず元気なーお前」
「ん、おはよー梶君」
苦笑しながら言ったのは森久保さん、コーヒーを飲みながら手を挙げたのはてらしーこと寺島君だ。
二人とも・・・えっと、相変わらず眠そうだな。
「ちょっと昼飯に肉食ってきた!」
「うわ、昼間から肉食うの?よくやるよ」
「森久保さん肉ダメですっけ?」
「ダメなわけじゃないけどさぁ、昼間からはあんまないわぁ」
「あ〜・・・。梶君若いから」
「おー、おれ若い?マジで??」
「ちょ、俺が若くないみたいだろー、若くないけど」
「ははっ、自分で言った〜」
ホント、傍から聞いたらどうでもいい話で皆で笑いながら盛り上がる。
どうしようもないほどアホっぽいけど、おれの大好きな時間だ。
・・・と。
「拓篤」
「?はぁい?」
おれを見てニッと笑みを浮かべた森久保さんがちょいちょい、とてらしーを呼び寄せる。
徐にてらしーの肩に腕を置いて耳元で何か話しかけてて・・・?
その行為にか内容にかは分からないけど、ちょっと驚いてたてらしーも「そうですね」なんて言って笑ってるし・・・。
え?何?
おれのこと話してる??
「ちょー、二人でズルイですよー!!!」
「へへーん、俺ら二人だけの秘密だよなー?」
おれの猛抗議に森久保さんがてらしーの肩を抱き寄せた。
それに特に抵抗する事もなく、てらしーも「ねー」って笑ってる。
ズルイと散々喚くおれを無視して笑ってた二人だけど、ふと森久保さんがてらしーの方を向いた。
「拓篤お前あれな、丁度いいな」
「何がッスか、身長的にですか?」
「うん、何か丁度いい」
「嬉しくないなー、それ」
あはは、と笑うてらしー。


・・・あ、なんか。
なんか。


「・・・ぅえっ?!」
疎外感とか独占欲とか・・・なんか良く分かんないけどもやもやして、気付いたらてらしーの腕を引っ張って自分の方に抱き寄せてた。
ぽす、とか可愛らしい音じゃなくて、どさっていう二十代男子の音が身体を通してちょっとした痛みとともに伝わってくる。
「・・・何!」
びっくりしたようなてらしーの顔。
そんな顔されてもおれだって困るんだけど。
「あはは、何ー、嫉妬したの?」
「え、そーなの?」
からかうように言う森久保さんに、てらしーがきょとんとした表情でおれを見上げた。
「べっつにー」
「・・・何、怒ってる?」
「怒ってないですぅー」
「うわこいつめんどくせっ」
ぎゅうっと抱きつくと途端に嫌そうな声で言い始める。
「はいはい、仲良ーねー、お前らは」
そんなおれたちを一蹴するように笑い飛ばした森久保さんはぽこぽこと丸めた台本でおれたちの頭を一発ずつ叩いた。
「いってぇ」
「・・・つか、俺は巻き込まれただけでしょ」
「連帯責任だよ、ばぁか」
小気味いい音に二人揃って恨めしそうな顔で見ると「んな威力強くしてねーよ」なんて言いつつ叩いた張本人がニッと笑う。
「本番始まっぞー」
「・・・はぁい」
「・・・梶君の所為で怒られただろ」
いつもの明るい森久保さんにそう返すと、てらしーが不機嫌そうな表情で言ってきた。
・・・うん、いや、まあ・・・おれが悪いんだけど。
そんな顔しなくてもいーじゃん。
「・・・怒ってないじゃん」
「注意も怒った内に入んの。・・・つか、何、今日は」
「だから別にって」
「いつもは別にでそんな事しません」
「今日はいつもと違うの」
「だからその理由を聞いて・・・!」
「・・・うん、分かったから。その話は本番の後な?」
はいはい、と諫めながら森久保さんがブースの中に入る。
「今日の梶君ワケ分かんねぇ」
拗ねた口調でおれから離れると扉に手をかけたてらしーは振り返って「ただのじゃれあいに嫉妬してんじゃねーよ!」って言ってそのままブースに入っていった。



・・・嫉妬?
なんで?

いつものじゃれあいだったのに??

「・・・なんでだろ」
自分でもよく分かんなくてどうしようもなく頭がグルグルして。

でも、一つだけ言えるのは。

(だってなんかムカついた)



ーーーー
ナマモノは早く消化してしまおうと;
遅くなってごめんなさい・・・。
なんかよく分からんけど嫉妬する梶君・悪い大人祥ちゃん・それに振り回されるてらしーでした(笑)

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