イチャイチャ10題・担ぐ(イチウリ

・・・あ〜、あっつい。
マジで暑い。
このくそ暑いのにマラソンさせるとか・・・あの体育教師どうかしてんじゃねぇの・・・?
「・・・あっちぃ・・・」
「・・・暑いって・・・言うから暑いんじゃないのかい?」
だらだら走りながら愚痴る俺に相変わらずの嫌味ったらしい口調で返してきたのは俺の横をつけてる石田だった。
「・・・るっせぇな・・・」
ただでさえ疲れるっつのに喋らすなっつの。
まあ石田も口調だけはいつも通り冷ややかだけど、それ以上に見て分かるくらい疲れの色が出てんだよな。
・・・んなムキになって俺の横にいなくても・・・。
そんな事言うと怒られっから言わねぇけど。
それに石田は元々足速ぇしな。
無理してるって感じじゃ・・・。
「・・・え?」
チラッと横を見た俺は石田がいないことに気付いた。
慌てて後ろを向くと急激なスピードでペースが落ちてる石田がいて・・・。
え?は?あいつもしかして・・・限界?
「石田!」
駆け寄ると石田はホントに限界って感じで、それでも走り続けてる。
「お前ちょっと休め」
「・・・る、さい・・・なぁ・・・」
ふらふらしてんのに相変わらずの口調。
ちったぁ甘えろってんだ!
「あのな」
「僕にリタイアしろ・・・って?そんなの・・・プライドが許さ・・・ない」
「プライド云々の前に死ぬっつの」
「・・・こんなこと如きで・・・死なないよ」
「ばっか、お前、熱中症なめんな!」
ああ言えばこう言う石田に若干イライラしてきた俺は徐にその身体を担ぎ上げた。
「・・・え、ちょ・・・うわぁっ?!」
「はいはい、日陰行くぞ」
「・・・ま、待て、黒崎!」
慌てて俺を止める石田の声を無視して俺は石田を担ぎ上げたまま日陰に向かう。
石田も口では文句言ってっけど、抵抗するだけの力は無いらしくて大人しい。
・・・いや、まあ耳元で文句言うから煩いっちゃあ煩いんだけどよ。
「ほい、とーちゃく」
「・・・君ねぇ・・・」
水道の近くに石田を下ろすと早速睨まれた。
礼を言われるならまだしも、文句言われるってどーよ?
「黙ってろっつの。大体、ちょっとサボってるくらいバレねーよ」
「ばれるよ!!・・・あ、あんな・・・」
「は?何?」
タオルを水で濡らしてる時に何か言うから聞き取れなくて聞き返すと、ムッとした表情の石田は「何でもない!」とそっぽ向いた。
・・・変なヤツ。
「ほら、これで身体冷やせ」
「・・・どうも」
タオルを手渡すとむすっとした顔をしながらも素直に受け取る。
いつもなら二言三言文句を言うはずなのに・・・よっぽど暑かったんだな。
背に腹は変えられぬってか?
「無理して完走しようとしなくても良かったのによ」
「・・・るさい、なぁ・・・」
「大体おめー何でも完璧にしようとしすぎ」
「煩い。君が大雑把過ぎるんだよ」
「楽天的って言えよな」
「同じだろ」
「るっせ」
いっつも通りの口調で俺の言葉に反論してくる石田。
うん、元気になってきたんじゃねーの。
「どうせ後10分くらいだろ?このまま教室戻ろーぜ。おめぇ、水分補給しねーとなんねぇし」
「だからばれるってば。君、ただでさえ目を付けられてるのに。僕は大丈夫だし」
「大丈夫じゃないから倒れかけたんだろーが。後、あいつ最後自由解散じゃん。黙ってりゃ分かんねぇよ」
「あのねぇ・・・!」
俺に突っかかろうとしてたらしい石田も漸く諦めたのかふと溜め息を吐いた。
「・・・ばれたら君の所為にするから」
「はいはい」
「分かってるのか?!黒崎!」
「わーってるって、うるせぇなぁ、石田は」
拗ねた口調の石田にニッと笑いかける。
途端きょとん、としてみせる石田が可愛い。
「また担ぐぞ?」
「・・・なっ・・・。・・・っ、黒崎!!!」
そう囁いてやると面白いくらいに真っ赤になって怒鳴ってきた。
あー、面白れぇ。
やっぱり石田はこうでないとな!




ミンミンミン、とセミが鳴く



俺達の暑い熱い学生ライフ


ーーー
担ぐって言われて一番最初に出てきた黒崎さん(笑)
短めで久しぶりすぎるイチウリでした!

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