イチャイチャ10題・手をつなぐ(ザーイス

「・・・これは・・・すげぇな」
目的地とおれが今いる場所とにはだかる『それ』に思わず固まった。
いや・・・うん、整備してねぇ街だし、なんとなくは予想してたぜ?
実際廃屋とかもう家のレベルを超えてたし、最初は森かと思ったもんな。
けどこれは・・・ねぇよ・・・。
あー・・・けど行かないとなんねぇっていうか・・・やっぱ行かなきゃダメ・・・だよなぁ・・・。
「・・・行くか」
「・・・おっ、俺はヤダからな!」
折角決意を固めたってのに横からそう言われて思わずおれは脱力した。
「・・・イスファル・・・」
すとん、と腰を下ろしておれを見上げるのはイスファルだ。
・・・いや、まあ・・・分からなくはねぇけどさ。
「・・・。俺、此処に居る」
「何処にいても危険度は変わらねぇと思うぜ?」
「・・・!ザードは!あれを渡れって?!!」
ビッとイスファルが指を指す方向には今にもロープが切れそうな長いつり橋があった。
・・・ロープの問題だけならまだいい。
明らかに乗ったら壊れそうな雰囲気醸し出してるわそれが架かってる川も流れが速いわ川底までの高さが尋常じゃないわでホント出来れば行きたくねぇんだよな。
おれたち、魔獣に壊された街の調査っていうので来てんだけど・・・帰って良いかな、マジで・・・。
今まで魔獣がいなかったのに足踏み出した途端窓割って襲ってくるとか反則だろ。
「・・・帰りたい」
「分かるけど!」
弱音を吐くイスファルに思わず同意した。
軍人でログや魔獣に立ち向かってきたイスファルでさえ、此処の環境は最悪すぎたみてぇだ。
「・・・けどさ、この奥には元の街の人がいるんだろ?どういう経緯でこうなったのかも知りたいし」
「・・・」
「ほら、行こうぜ、イスファル!一緒に行けば怖くないって!!」
まだ渋ってる様子のイスファルに元気付けるように言って冷たい手を取った。
ニッと笑いかけて戸惑ってるイスファルの手を引いて立ち上がらせる。
「・・・調査・・・だから、な」
自分に言い聞かせるようなイスファルの声。
・・・そうだな、これは調査だ!
「今なら魔獣もいねぇし、な?」
「・・・橋渡ってる最中に襲ってきたらどうするつもりだ・・・?」
「・・・あ」
イスファルに指摘されて気付いたけど・・・そういえば盲点だったな・・・。
「・・・っと、『忍び足』!・・・これでいいだろ?」
おれの得意技でもあるそれを唱えてイスファルに笑いかける。
一定時間はこれで大丈夫だろ・・・まだMPもあるし。
「・・・い、行くぞ」
「・・・手」
「へ?」
足を踏み出そうとするおれにイスファルが半分泣きそうな表情で声をかけた。
・・・あ、可愛い、かも。
うわ、おれってばこんな状況だってのに可愛いとか思っちまった・・・。
「・・・手、握っておいてくれ」
「お、おう」
「離すなよ?」
「分かってるって!」
イスファルにそう返してつり橋に体重を乗せた。
・・・やばい、なんかギシギシいうんだけど。
ま、まああれだよな!おっさん集団じゃなくて良かったよなー、なんて。
あれ、おれ結構余裕ある?
「す、進むぞ」
「・・・あ、ああ」
イスファルの握る手の力が強くなる。
それにおれも次第に込める力が強くなって。
なんかドキドキしてきた・・・。
うわ、何これ?
エルディアで同じよう名状況になってもそんな事なかったのに!
「・・・ザード?」
後ろから聞こえる、イスファルの心配そうな声。
「だ、大丈夫だって!おれの手、しっかり握ってろよ?」
後ろを振り向く・・・勇気はないから声だけは自信たっぷりにそう言った。
「・・・頼りに、してる」
「お、おう」
言いながら握る手に力を込めるイスファル。
なんかこれだけで、あ、おれがしっかりしないとって思う。
・・・心もとないロープ握るよりもイスファルの手を握ってる方がおれも遥かに安心出来るしなー・・・。
なんて事を思いながら、おれは前だけを見ながら冷たいイスファルの手を安心させるようにぎゅっと握った。





ぐらぐら揺れる橋の上



ドキドキするこの気持ちは・・・初めてイスファルに会った時と似てるな、と頭の片隅で思った。




・・・橋を渡らなくても森の奥の村に行けたのに村に入ってから気付いたのは・・・暫く内緒にしといた方が良い、よな・・・?



ーーー
つなぐっていうか引くっていうか握るっていうかそんなザーイス。
最初技名が分からなくて1年ぶりくらいに3を起動させたのは秘密です。
・・・だんだん短くなっててすいません・・;;(ネタがない)(これは酷い)
つり橋効果!

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