鬱的花言葉で1日1題・七陽(節分草/へレニウム・鳩彼SSS

「ねぇねぇ、埋音くーん!!」
「・・・何?」
いつもの様に呼びかけたぼくを埋音くんが振り返る。
ぼくに見せるのは優しい笑顔だ。
いつも・・・いつも。
「埋音くん聞いてよ〜!あの教授酷いんだよ?ぼくの書いたレポートが間違ってるって・・・」
「君は悪くないよ、大丈夫。見せて?」
埋音くんが手を差し出す。
ぼくは教授からつき返されたそれを渡した。
早速赤いペンを出して何やら書き込みをしてる。
ふぇえ〜、埋音くんは凄いな〜。
そういえば塾の講師やってたって言ってたっけ〜。
埋音くんはぼくがどんな泣き言を言っても受け止めてくれる。
他の鳥に拒絶されても、きっと、きっと、埋音くんだけは・・・。
「・・・埋音くん」
「ん?」
きょとん、とした顔で埋音くんがぼくを見る。
「きみはぼくを拒絶したりしないよね?」
「・・・何を言い出すかと思えば」
くすくす、と埋音くんが笑った。
綺麗な黒い髪がふわふわと揺れる。
ぼくは真剣に聞いたのに〜!
「笑うなんて酷いよ〜・・・」
「ごめん、急に言うから」
小さく笑った後、埋音くんはゆっくりと笑みを見せた。
いつものように。
ぼくを、安心させるように。
「しない。しないよ。僕は君を拒絶したりなんてしない」
「・・・本当に?」
「本当だよ。信じて」
埋音くんが柔らかく微笑む。
真っ直ぐにぼくを見つめるそれは嘘をついているようには思えなかった。
ねぇ、信じていいよね?
全てを受け入れているようなその微笑みを、ぼくは信じても、いいんだよね〜・・・?
「・・・。・・・それより、レポート添削したよ。ここと・・・ここの箇所が弱いかな。資料集めて、後10ページくらい足せばもっと良くなると思う」
「えぇ〜?!!そんなぁ〜・・・。朝までかかっちゃうよ〜」
「僕が一緒にやってあげるから」

きみが微笑む。
いつもの・・・最初にぼくと会った時と同じように。




・・・薄々気づいてるよ


きみの傍らに咲く花の名前を


その花言葉の意味を


・・・それでも、ぼくはきみを・・・

ーー
七陽・拒絶/絶望の恋

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