岩坂バレンタイン(鳩彼SSS

ビーカーで沸かしていた珈琲がこぽりと音を立てる。
「・・・。先生、いい加減珈琲くらい普通に沸かしません?」
給湯室があるでしょう、とソファから身を乗り出してそう言ったのは坂咲君だ。
「飲むのは私自身です。何か問題でも?」
「真面目に言うと不衛生です」
「本音は?」
「俺も飲むんですよ?・・・俺が、イヤです」
にこり、と坂咲君が笑む。
まったくわがままですね。
「飲まなければいいでしょう」
「いいじゃないですか。どうせ淹れるんですし?」
一羽も二羽も変わらないでしょうとあっけらかんと言う坂咲君に嫌な顔をしてみせる。
・・・一応敵である私に己の口に入るものを頼むとは・・・。
坂咲君は本当に、甘い。
カップに白い粉を入れてから珈琲を注ぐ。
香り高いそれが部屋に広がった。

彼にこの薬を投与して1ヶ月。
そろそろ変化が現れるはずだ。

「貴方の為に淹れている訳ではないのですけどね」
「もう。そんな事言わないでくださいよ」
綺麗に微笑む坂咲君に珈琲を差し出す。
「ありがとうございます、岩峰先生」
「・・・いいえ」
受け取ったそれを何のためらいもなく飲む彼に、にやりと笑いかけた。
・・・ああ、本当に貴方は。
「そういえば先生、マメンタインの贈り物はどうしたんです?」
「マメンタイン?・・・ああ」
そういえばそんな行事があったことを思い出す。
全く持ってくだらない。
「・・・全て捨てましたが」
「・・・また・・・」
坂咲君が眉を釣り上がらせる。
愛想つかされても知りませんからね、と言いながら私が淹れた珈琲を飲む坂咲君は本当に無防備だ。
こうしている間にも、彼の身体を薬が蝕んでいっているというのに。
「例えば・・・」
「なんです?」
問いかける私に坂咲君がふわりと笑う。
「俺が先生に何か渡しても・・・先生は捨ててしまうんでしょう?」
いかにも挑戦的なそれに、さあどうでしょうね、と返して私は己の机に戻った。



マメンタインはどうでもいい。


私にとってはくだらない行事だ。


それでも、まあ。


・・・彼の綺麗な顔が絶望に歪むまで。


彼とのお茶の時間を楽しむ事にしましょうか。








私は誰かに与えられるくらいなら自分で手に入れたいのです




ねえそうでしょう、私の愛しい貴方(実験用玩具)


(誰も、自分ですら知らないところで傷ついて


そんな貴方を私の中に落とし込みたい)


ーーー
CDでも漫画でも岩坂すぎて、もう、書くしかないってなった。
多分これの続きは裏になりそうww

name
email
url
comment