鬱的花言葉で1日1題2章・レンカイ(片栗/黄菖蒲・ボカロSSS

「存外優しいのだな、お前は」
黒を纏った彼が困ったようにそう言った。
「いやいや、僕は貴方が大好きですからね?貴方の役に立ちたいだけですよ」
そう、しれっと言って立ち上がる。
「調子に乗るな」
途端に嫌そうな顔をする彼・・・クラシックさん。
「ねぇ。あいつのどこがいいんです?」
「そう・・・だな。・・・優しいぞ」
「僕だって優しいですけども?!」
「お前の優しさはまた違うだろう?」
くすくすとクラシックさんが笑う。
まったく、楽しそうなんだから。
今クラシックさんはある人に恋をしているらしい。
僕が食べる夢に出てくるほどに、思い続けてる人。
甘い夢を食べるたびに僕はちりっと胸が痛むのを感じていた。
・・・これが嫉妬ってやつ、だろうか。
本当に、あんなやつの何処がいいのか、とステッキを弄びながら思う。
まあその人がなかなか・・・なんて言うんだろうか。
う〜ん、クラシックさんを振り回してるというか・・・クラシックさんを不幸にしかしないというか。
現にクラシックさんはきちんと睡眠が取れていない。
僕だって食事が出来ないから困るんだけども・・・それは置いておいて。
・・・そして僕はそんなクラシックさんに猛烈アタック中。
ま、上手い事かわされてるんですけどね。
それに僕は別にクラシックさんを困らせようと思ってるわけじゃない。
最初はただの食事だった。
・・・それがいつの間にか恋になってた、それだけの話。
「クラシックさん」
「ん?」
クラシックさんが振り向く。
この人も大分丸くなった。
最初は僕の事『貴様』なんて呼んでいたのに。
・・・だからそれだけで充分。
「なんでもないですよ」
にこりとぼくは笑う。
変なやつ、とクラシックさんが珍しく笑みを見せた。
言える訳がない。
食事の為に近づいた彼を。
・・・本気で好きになってた、なんて。
「僕は貴方と夢で会えるだけで充分です」
「・・・。・・・言っていろ」
頬を染めてそっぽを向くクラシックさんはとても可愛かった。

本当に幸せだったんだ。
・・・この時までは。



「・・・え?」
暗い部屋、ベッドに横たわったクラシックさんを僕は呆然と見下ろした。
寝てるんじゃない。
どんなに触れても、甘美な夢どころか凄惨たる悪夢すら見えてこなかった。
「・・・なんで・・・」
目を覚まさないクラシックさんの首元をつかむ。
枕元においてあった、空になった小瓶が滑り落ちた。
どうして。
どうして貴方は僕に何の相談もなくこの毒薬を飲んでしまったんですか・・・?
「・・・答えてくださいよ、クラシックさん・・・」
嗚呼、僕は。
こんな結末を見るために身を引いたんじゃないのに・・・。
『信じてるんだよ、私は・・・あいつを』
いつも呆れた顔か怒った顔しか見せなかったクラシックさんが初めて僕に見せた優しい笑みを思い出す。
それと同時に思い浮かぶのはクラシックさんが好きな「あいつ」の顔。
・・・赦さない。
僕は月を睨みつける。
彼が死んだわけじゃないのは頭では理解していた。
でも、話せないなら意味はない。
街で聞いた噂では、毒薬の解毒剤が見つかれば目を覚ますかもしれない、とのことだった。

でも。

そんな事どうでもいい。

ベッドの横にあった花瓶を叩き落す。
床に散らばった花をぐしゃりと踏みつけた。
クラシックさんをこんなにしたやつを僕は許さない。
・・・そうだ。
『彼』をどうにかすればクラシックさんは僕だけを見てくれますよね?
ねぇ、クラシックさん。


・・・貴方をこんなにした『彼』に復讐を。

ーー
レンカイ・嫉妬/復讐・信じる者の幸福
*トリッカー×クラシック

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