鬱的花言葉で1日1題2章・アルセイ(みぞはぎ/コケモモ・フラフロSSS

第一に寂しい目をしているなと思った
第二に美しい男だと思った

そして

第三に俺は恋に落ちた




ただただ冷淡なだけの男・・・最初はそういう印象だった。
しかし。

「おい、セイ」
「・・・何?アル」
紺色の長い髪を揺らしてセイ・・・セイリオスが振り返る。
俺たちは逃亡者だ。
国家反逆という大罪ゆえの。
きょとんと俺を見るセイリオスの、幼い表情からは信じられないが・・・こいつは強いのだ。
とてつもなく。
それは目によく現れている。
目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。
それ以上に濃い蒼の目の奥に秘めた悲哀の色は・・・花の様に美しかった。
「アル?」
「・・・ああ」
首を傾げるセイリオスの髪が風に舞い上がる。
「セイ。何処か行くあてはあるのか?」
俺の問いにセイリオスがまさかと自嘲気味に微笑んだ。
「俺はお尋ね者だぞ?・・・受け入れてくれる町があるとは思えない」
「何故・・・彼を殺した?」
切ない笑みを見せるセイリオスに残虐な質問を投げかける。
「・・・。・・・反抗心、かな」
少し考えてから悪戯っぽくセイリオスが笑った。
反抗心、ね。
「アルは?」
「ん?」
「アルはどうしてリルガードを捨てたんだ?」
「捨てたわけじゃない」
純粋なそれにおれは苦笑する。
リルガードを捨てた・・・それは違う。
俺がリルガードを離れたのは、俺がいなくてもこの国は大丈夫だと感じたのと、セイリオスを護りたかった。
ただそれだけだ。

「国の騎士じゃない。お前の騎士になりたかった」
「・・・俺はお前にとって憎む相手なのに?」
「まあ、そうだが」
自分が傷つくような質問をするセイリオスに俺は笑う。
今のセイリオスはあの時と同じ目をしていた。
誰かに剣を向けたときのセイリオスは切ない表情をしていた・・・俺はそう感じた。
俺が憎んでいる・・・リルガードを崩壊させたファムズ・ロッジのヤツラとは違う、純粋に平和を望む目だった。
俺はそこに・・・惹かれたのかもしれないな。


「それに。俺は護ってなんか欲しくない」
「冷たいな、お前は」
「・・・優しいほうがいいのか?」
くすりとセイリオスが笑う。
まさかと笑って細い手をとった。
ぼんやりと見つめるセイリオスの手に口づける。


ちっぽけな反抗心を抱えて明るい世界から逃げ出した俺は



悲哀を一身に背負った華の騎士になると、決めたんだ



ーー
アルセイ・悲哀/冷淡・反抗心

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