鬱的花言葉で1日1題2章・ザーイス(枯れた白薔薇/ペラゴニウム・フラハイSSS

「なぁ、ザード」
「あ?」
何時も通りの昼下がり。
飯も食い終わって、久しぶりにイスファルとのんびり過ごしている時だった。
「なんだよ?イスファル」
「あのな」
にこっと笑ったイスファルが立ち上がる。
「俺を、殺して」
「・・・あ?」
綺麗なそれとは似合わない、唐突に告げられた単語におれは思わず絶句した。
今、なんて?
「いつか俺は暴走するかもしれない。その前に俺を殺してくれないか」
「・・・っ、なんで!」
ずっと考えてたんだ、と何でもないように言うイスファルに掴みかかる。
こいつは、イスファルは、誰よりも生きる事を望んでたはずだ。
・・・なのに、なんで・・・っ。
「人間のまま死にたいから」
イスファルが悲しい笑顔でそう言った。
・・・ああ、そうか。
すっと力が抜ける。
そういえば。
「俺の身体は所詮この世のものじゃない。・・・だから」
「・・・暴走しないかもしれないだろ」
「言い切れるか?『神様』だってどうしようもないのに」
イスファルが自嘲気味に笑った。
「・・・」
「この先どうなるか分からない。もうあんな・・・誰かを殺してしまった絶望を味わうのはイヤだ。なら、いっそ」

好きな人の手で葬って欲しい

そう、綺麗に微笑むイスファルは本当に綺麗で。


「・・・分かった」
「ザード」
「けど、おれからも一つ頼みがある」
「え?」
きょとんとするイスファルの冷たい手を握る。
・・・イスファルはこんなこと望んでない。
分かってる、でも。
「おれを、殺して」
「・・・ざー・・・ど・・・?」
「イスファルが、イスファルとしての意志が在るときに、おれを殺して。そうしたらおれはあんたを躊躇わずに殺すことが出来る。・・・一緒に死ぬ事が出来る」
一緒に死のう、とイスファルに甘く囁く。
・・・そうすれば一人ぼっちにはさせない。
ずっと、ずっと一緒にいられるから、と。
(嗚呼、おれは何て酷い男なんだろうな!)

下を向いていたイスファルがゆっくりと顔をあげる。

うん、と微笑んだイスファルの目にあるのは、希望か、絶望か。




枯れ果てた大地で育ったおれが見つけた唯一の白い薔薇が、この美しい庭園で枯れるのを望むなら


それがどんなに悲しく切ない望みでも

おれは叶えてみせるよ



ーー
ザーイス・死を望む(通常は『純潔』)/切ない望み

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