鬱的花言葉で1日1題3章・CA(ヘクソカズラ/ガマズミ・終プロSSS

「・・・A弥さぁ」
「・・・?何?」
いつもなら生返事をされるのに、ケータイに文字をを打つ手を止めて珍しくオレを見つめるA弥に面食らいつつもにへらと笑う。
A弥の黒い髪を風が揺らした。
「いや、ケータイ好きだよなぁって思って」
「・・・。・・・別に。僕はケータイが好きな訳じゃないし」
噂を作るのが好きなだけだから、と再びケータイの画面に目を落としながらA弥がいう。
そう。
A弥ってそういう奴だよね。
噂を作るための手段で、ケータイが好きなわけじゃない。
「・・・じゃあ、さ」
「・・・?何」
「好きな人っている?」
笑いながら言うオレにA弥はぽかんとオレを見上げた。
「・・・何、急に」
「いいからいいから」
促すと、A弥が小首を傾げながら口を開く。
「・・・いないけど」
一言、短いそれは知っているだろうとでも言いたげだった。
純粋な疑問を浮かべたA弥の目がオレを見据える。
それは言外に、何故そんなことを聞くのか、と問いかけてた。
そうだよね、A弥。
好きな人なんて、いないよね?
「・・・なんなの?」
「いや?興味があっただけだよ?」
「・・・。よく言うよ」
すい、と画面に目を落としながらA弥が小さく口を開く。
知ってるだろ、と一言置いてA弥はぱちんとケータイを閉じた。
「人間嫌いだから、僕」
「またそういうことを・・・」
あまりなそれに、オレは思わず苦笑する。
噂を作ってそれに誰かが踊らされてるのが好きだという、A弥らしい言葉だ。
「もうちょっと言い方考えた方がいいよ?」
「別に、僕は困らないし」
「はいはい。しょうがないなぁ、A弥は」
そう言いながらさらりと揺れるA弥の髪に触れて弄ぶ。
嫌そうに眉をひそめながらも避けようとはしないA弥にオレは心の中で小さく笑った。





部屋に帰ってすぐ、PCを起動させる。
そこに映っていたのはさっき別れたばかりの・・・珍しく夕食まで一緒だったからもう遅い時間なんだけど・・・A弥だった。
画面の中のA弥は変わらずケータイをいじっている。
違うのは制服か私服なのか、だけだ。
・・・また噂でも作ってるんだろうか。
人間嫌いなA弥がSNSなんかするはずもないし。
(そうかな)
誰かが笑う。
ああ、そうさ。
きっとそうだよ。
A弥はSNSなんてしない。
だって、A弥にはオレがいるからね。
(旧校舎のメンバーかも)
ないよ。
絶対にない。
A弥が女子とメールだって?
ありえないね。
オレにもメールなんてめったにしてこないって言うのに。
ま、オレもメールなんてしないけど。
(無視されるから?)
・・・五月蠅い、なぁ。
A弥がオレを無視するはずないだろ。
人間嫌いなA弥が、たった一人心を許した人間なんだから。
そうだろ?ねえA弥!!


画面の中のA弥を指でなぞる。
キーボードの横においてあったスマホを取り上げた。

無視するわけない。

いくら人間嫌いのA弥だとしても。
だってそうだろ?
話が合うからってA弥が気を許してる旧校舎の二人と、オレは違うんだ。



するはずないよ、A弥がオレを無視するなんて
(無視したら?)

・・・。
もし、もしA弥が無視したら・・・オレは・・・


嗚呼、オレはどうなってしまうんだろうね!!!!






スマホのメール作成画面を閉じる。
PCの向こうで、震えるケータイを手に取るA弥を凝視し続けていた・・・。





(画面が歪む、視界の端に紅いものがちらついた




・・・熱帯夜、一人の少年はもう一人の自分が嗤うのを見たんだって)

ーー

CA・人間嫌い/無視したら私は●●す

name
email
url
comment