鬱的花言葉で1日1題3章・レイセイ(トリトマ/コリアンダー・フラフロSSS

愛しい人に似ている、彼がいた

彼の所為で、愛しい人は俺の前から姿を消した



ねえ、どうしてくれる??
ねえ、どうしてくれるのかな?
・・・ねえ、セイリオス






「・・・や」
「・・・。・・・なんだ、バルディアの狗」
にこりと手を振ると、彼は途端に嫌そうに表情を歪めた。
・・・ほっんとうに俺のこと嫌いだよねぇ、セイリオスは。
まあそれでも呼び出したら来てくれるとこは律儀っちゃあ律儀だけど。
本当、嫌になるくらい似てる。
「今日は一端のカイゼルシュルト市民だよ」
「で?カイゼルシュルト市民がゼスタに何の用だ」
「相変わらず辛辣だなぁ、セイリオス」
にこにこと笑みを貼り付けて言うと、セイリオスがびくりと表情を強張らせた。
「・・・っ、名前を、呼ぶな!」
「・・・ああ、そうかここでは犯罪者だっけ?ねえ、『セイ』」
笑って、彼の長い髪を指で弄ぶ。
セイリオス=ファラン。
本名はセイリオス=ナイトスター。
バルディア大戦を引き起こした当事者であり・・・犯罪者。
俺はそんな彼を捕まえる身だけれど、今日はまあ軍服も脱いでるし、呼び出したのは俺だし。
「・・・。レイ、お前のそういうところが嫌いだ」
俺の手を叩き落として、セイリオスが睨んだ。
幼いころに彼が・・・ファラン家に身を落とす前のセイリオスが・・・呼んでいた俺の名を紡ぐ。
【アイツ】の顔で。
【アイツ】の声で。
【アイツ】の仕草をしながら。
セイリオスが辛辣な言葉を紡ぐ。
「そういうところって?」
「意地悪なところ。分かっててやってるだろ。昔っからそういうところあったぞ」
口調が少し昔に戻ってる・・・ような気がする。
・・・なんだろう、胸が痛い。
「おい、聞いているのか」
「・・・。聞いてるよ」
にこりと笑う、俺。
「セイ、お前昔から俺のこと嫌いだっけ?」
「ああ。昔から嫌い」
「どうして?」
「・・・もういいだろう。昔話をしに来たのか?」
首をかしげるセイリオス。
・・・昔話、ね。
そうだよ、昔は戻ってこないんだ。

だったら。



俺が作れば、いい。





昔の、皆が俺の思い出通りだった、あの頃を。



大切な人たちがみんなそばにいた、あの頃を。





その為にはねぇ、君を捕えなきゃ。
(そうすれば胸の痛みも消えるかな)




「・・・?・・・レイ・・・?・・・!!」
「ごめんね、セイリオス」
顔を覗き込もうとするセイリオスの、鳩尾に拳を叩き込んだ。
どさりと俺の方に倒れこんできたセイリオスを抱きしめて、俺は嗤う。


ごめん、ごめんね、セイリオス。

俺の愛しい・・・彼のために、俺のそばにいてくれないか?

そうすれば、彼もきっと俺のそばから離れないはずだから。

・・・この胸の痛みも、取れるはずなんだよ。
(それは●にとってもきっと必要な犠牲)




「は、なせ・・・っ!」
セイリオスが苦しそうに咳き込みながら手を突っぱねる。


違う、ちがうチガウ。



「ぃ、あ・・・!!!!」
髪の毛を引っ張り上げて頭を踏みつける。
チガウチガウチガウチガウチガウ。

オレノ、オモイエガイタヒトガイル、オモイエガイタセカイハ、ココジャナイ。

何が違う?
あの頃と何が違う?
イオメティスを振り上げる。
嗚呼、そうか。
君の、お前の、長い髪。
俺にヒミツを隠した、蒼くて長い髪。
いらないよね?
あの頃は長くなかった。
髪が長いから離れていったの?
ならいらない。
必要ない。
ねえ、そうだよね?




ロナード?








ーー

レイセイ・胸の痛み/辛辣

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