鬱的花言葉で1日1題3章・ザカイス(アリウム/アネモネ・フラフロSSS

・・・ここは、どこだ。
ぼんやりとした思考の中、俺は思う。
・・・ここは・・・。


「あ、起きた」
聞こえた声に俺は振り向いた。
くすくすと笑いながら黒くくせのある髪を揺らせて男が立っている。
「・・・お前は、誰だ?」
「俺?俺はイスファル=ランスヴェル。よろしく、ザカリ―=ファラン」
にこりと笑うそいつ・・・イスファルがとんでもないことを言ってのけた。
・・・なんだって?
「お前がセイリオスの弟分?」
「・・・な、んで、それを」
「ふふー、内緒」
睨む俺にはお構いなしで、そいつは機嫌よさそうに笑う。
なんなんだ、こいつ。
「ケイン=リバースって偽名もあるのか?ザカリ―のがいいのに」
「・・・っ、お前に何がわかる!」
「分かるよ」
ふわりと笑うイスファルはどことなく悲しげだった。
「・・・。ここは?」
「ここは、元ログ・ダーナ。今の名前はセルシウス」
「・・・セルシウス?」
「そう。お前たちにはフロンティアと言った方が分かりやすいか」
うーん、と考えるようにイスファルが上を向く。
「有体に言えば、死後の世界、かな」
「死後・・・?」
「お前は、死んだんだよ」
「・・・死んだ・・・?」
「ああ。お前は死んだ。もっと言えば殺された」
淡々と告げられる、事実。
殺された?
俺が?
誰に?
「思い出すよ、そのうち」
「お前は・・・」
ぐっと首を絞める。
「何なんだ、お前は!!!!人の希望を奪っておいて!何がわかる!」
「・・・わか、るよ。俺も、死んでる・・・から」
「・・・何?」
その言葉に手を放した。
せき込みながら、イスファルが微笑む。
・・・それはどこか兄貴に似ている・・・気がした。
「お前が死んだのは当然の報いだ。何の罪もない人を殺したんだから」
「・・・」
「目的を遂行するためには必要な犠牲だった?そんな訳ない。自分の快楽のためだけに殺した。違うか?」
「ああ、そうだ。それの何が悪い?」
「・・・。お前に、綺麗ごとなんて言うつもりないよ。でも、お前は殺された。それは変わらない事実だ」
ああ、そうだ。
思い出した。
俺は、殺された。
あんな、弱い奴に・・・っ。
・・・いや、それはもうどうでもいい。
そりゃ、もしあいつに会うことがあるなら今度は殺してやりたいと、思うさ。
けど、それより。
「お前は?どうして死んだ」
「さあ?なんでかな」
くすりとイスファルが笑う。
それはどこか悲しみに満ちていた。



もっと知りたい。

こいつのことを、もっと。






他のやつが知ってることを、俺も知りたいんだ。


綺麗な、無限の悲しみに満ちている、イスファルのことを。




知りたい、知りたい知りたい知りたい。


まるで病気みたいに俺を蝕む。




ああ、俺の恋した人。



俺のそばにいてくれ。

俺以外は、見ないでくれよ。


でないと、嫉妬で死んでしまうかもしれないだろ?
(もう死んでるけどサァ)



ーー

ザカイス・無限の悲しみ/病気・嫉妬のための死・消えゆく希望

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