108本の薔薇とキミとボク(米英SSS

始まりはエイプリルフールに見たネット記事だった。
流石グーグル先生、情報量が違うね!なんてちょっと浮かれながら、如何にも彼が好きそうだなぁ、なんて思う。
「イッギリスー!」
「・・・何だよ、アメリカ」
いそいそと海を渡り、彼の元へ行けばいつも通り紅茶を飲みながら仕事をしていた。
まるで来ることを予想していたような反応に拍子抜けしながら「今日は何の日か知ってるかい?」と問いかける。
「エイプリルフールの次の日」
「そうだけどさぁ」
至極簡単なそれにがくりと肩を落とした。
まあこういうのは想定の範囲内だけれど。
「今日はエイプリルフールの逆の日なんだぞ!」
「知ってる」
びしぃ!と指を向ければあっさりと言われてしまった。
あれ、と思う。
「お前なぁ、俺の家が発祥なんだから知ってて当然だろ」
「そこは知らない振りするべきだろう?」
呆れたような彼に、ノリが悪いぞ、君、とぶすくれれば、うるせぇと返された。
可愛いのは顔だけだなぁ、なんて思いつつ「じゃあこれは?」と続けた。
「は?」
「これさ」
ばさりと背後に隠していた・・・尤も、隠れていたかは別として・・・花束を差し出す。
「108本のバラの花」
「・・・あー」
得意気に言ってやれば彼は何ともいえない表情をしていた。
頬がほんのりと赤い。
「どうせネット知識だろ」
「良いじゃないか!便利なものは使わないと」
照れ隠しか、負け惜しみの様に言う彼に言ってやった。
108本の薔薇の花束。
それにも意味があると知ったのは確かにネットからの情報だった。
意味は・・・そう。
「[結婚してください]」
受け取ってくれるかとわくわくしながら見ていれば、はぁ、と溜め息を吐き出した。
「・・・イギリス?」
「・・・100年はぇえんだよ、ばぁか」
それにきょとりとしていると、彼は綺麗に微笑んで差し出した花束から幾つかだけ抜き取る。
その数は9本。
確かその意味は。
「今日はこれだけ受け取ってやる」
紅い花弁に口を寄せて笑う彼に、ドキリとする。
「出直してこい」と笑む彼に、「また告白しても良いってことかい?」とばか正直に聞いてしまった。
「さぁ?」
「なんだよ!絶っ対受け取らせてやるんだからな!!」
「まあ待っといてやっても良いけど?」
くすくすと珍しく上機嫌に笑う彼に悔しくなって花をどけてキスをした。
「・・・っ、てめ、アメリカ!!!」
「ははは!イギリスはそういう方が似合うんだぞ!」
怒鳴る彼に「今度はもっとビッグなサプライズを用意してくるからな!」と笑って部屋を出る。
天の邪鬼な彼が許してくれた嘘偽りのない「今度」に胸を高鳴らせ、そこに思いを馳せた。


その、ストレートじゃない彼が99本の薔薇に隠したメッセージを抱えて。

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