ジニギル・ストギル(SSSR15

ひたり。
彼がいる部屋の前で足を止める。
真っ白な壁、真っ白な床と天井、真っ白なベッド、そこに繋がれている・・・一点の黒。
「おはよう、ギルティ」
「・・・二度と来んな」
挨拶をしただけで睨まれる。
珍しく起きてたと思えばこれだ。
どうしてギルティは人を煽ることしかしないんだろう。
大体ここはボクの家なのに。
「ギルティってさ、学習しないよね」
「うっせ。・・・なあ、お腹すいたんだけど」
「食事よりも先にやることがあるでしょう」
ギルティのそれに返したのはボク・・・ではなくて。
「ジーニアス?」
「相変わらずお元気そうで何よりです」
こてりとギルティが首を傾げた。
それに笑みを見せるのはボクの後ろにいたジーニアス先生。
「なに、またなんか企んでんのか?」
ギルティがせせら笑う。
じゃらじゃらと鎖を鳴らして。

・・・どうして人を煽ることしかしないの、ギルティは。

「ギルティさんは自分の危機管理に対して多少うっかりしてらっしゃいますよね」
「ボクもそう思う」
「は?何が」
ジーニアス先生の言葉に頷いているとギルティが不思議そうに言った。
天然なんだからたちが悪いっていうか。
「今日は1月2日ですよ、ギルティさん」
「は?年越したのかよ」
「ねえギルティ、知ってる?」
有り得ない、とぶつぶつ言ってるギルティの耳元に囁いてやる。
「姫始め」
「あ?」
「だから、姫始めだってば」
形の良い眉をあからさまに吊り上げるギルティにそう言うと少しだけ首を傾げた。
知らないんだろうか。
罪深いほどに美しい、とか言われる割に案外そういうことに興味はないらしい。
「男性の場合ですと菊始めですね」
「そうなの。それは初めて知った」
「で?なんだその姫始め?とか菊始め?とか言うのは」
むくれた様子で聞くギルティをジーニアス先生が抱き上げる。
「おい、何す・・・っ!」
「ですからね、今日は1月2日です」
「それがなんだ!」
「つまり、初めて『老ける』行為をしても良いわけです」
暴れてぎゃんぎゃん喚くギルティをものともしないでベッドに投げるジーニアス先生。
「はぁ?意味分かんね・・・」
「だから、セックスしよっていってんのー」
「・・・あ?」
直接的な言葉を口にするとギルティの期限が急降下していくのが見て取れた。
こういう反応するのは得策じゃない、ってわからないんだろうか。
「今年初めてセックスするんでしょう?貴方も痛くないほうがいいでしょうに」
貴方ときたら、なんてわざとらしくため息をつきながらジーニアス先生が何かを取り出した。
「・・・お前それ」
ギルティが色を変えてベッドから降りようとする。
それを押さえつけると「離せ、旧作!」と声を荒げられた。
「ボクはとろっとろに甘やかしてあげるつもりだったのに」
「五月蠅い大体俺はそんなこと望んでな・・・ぃあ?!」
「口答えしない」
怒鳴るギルティにジーニアス先生が鞭を振り下ろす。
小気味いい音が響いた。
「口答えしたら叩かれるよ?ギルティ」
「誰の所為だと思ってるんだ、この旧作・・・ぃぎゃあ!!」
パン、と鞭をふるう音。
ビクン!とその背が跳ねる。
「あんまり傷つけないでね、ボクのギルティ」
「もちろんですよ」
にこりと笑うと先生も笑い返してくれた。
そういうとこは好きだけどね、ジーニアス先生。
痛みにうめくギルティの腕をベッドヘッドに繋いだ。
暴れられても困るし。
・・・もうすでに暴れてる気はしないでもないけど。
ジャラジャラ、音を立てる鎖。
すごくウルサイ。
まるで今のギルティみたいだな、なんて思った。
「外せ、このクズ!!!」
「ほら、暴れないでよ」
「貴様が変な事するからだろうがっ!!!!!」
「キミが煽るからだよ」
くすりと笑う。
変なこと言わなきゃ良かったのに、ねえ?
「はいはい、黙って犯されてくださいね、ギルティさん」
「しねこの藪医者!!!」
ギルティの声が白い部屋に響く。
ジーニアス先生の笑顔が濃くなった・・・気がした。
・・・あーあ。
「・・・覚悟は、出来てるんですね」
にっこり、ジーニアス先生が笑う。
ひっと喉の奥で悲鳴を鳴らすギルティに、ボクはくすくすと笑った。
怒らせたら怖いって、何度も経験してるはずなのにね。
ほんとバカだなあ、ギルティは!

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