ヤンデレ大和守安定×白無垢加州清光

それが本丸にあるのは異様だと思った。
「なー、見てみて可愛い?花嫁さんが着るんだってー」
きゃっきゃとそれを着て彼がはしゃぐ。
何がそんなに楽しいのだろう。
「えー、似合わないよお前」
そう、安定が返すととたんに彼はぶすくれた顔をする。
彼が、加州清光が着こんでいたのは彼には随分と大きく、何やら戦いにくそうな服だった。
漆黒のひらひらふわふわした奇妙な服。
綺麗かと言われればそうだと答えようが、それを着た彼がそうかと聞かれれば安定は否と答えるだろうと思った。
「お前、俺が何着たって似合わないって言うじゃん」
「事実だもん。それにこういう服はもっと清楚な人の方が似合うよ」

「何あれ。へーんなの」
「元々だろ。…ところでこれ誰の?お前のじゃないだろ」
「ん?ああ。燭台切さんの」
よいしょ、とそれから足を引き抜きながら彼が言う。
格好よさを求めるあの人にこれを見せたらなんというのだろうと考え、安定は頭を振った。
「なあ、なんか取ってー」
「なんかって…お前、いつものは?」
「主の部屋」
「ホント、馬鹿だよね」
「脱がせたのお前だろ!」


ぶすくれる清光に安定が言って後ろを向かせる。
何処で覚えたのか、それを器用に脱がせた。
清光も文句を言いつつもその行動を受け入れる。
少し着て満足したらしかった。
「お前に黒は似合わない」
「喧嘩売ってんの?」
「そうじゃないってば。お前より黒が似合う人はいるってこと」
睨む清光に安定は笑う。
確かに普段から黒を着こんでいる清光ではあるが、彼は黒と言うより。
「…花嫁ってさ、可哀想だよね」
「?なんで?」
疑問符を浮かべながら清光が振り返る。
ふわりと黒が揺れた。
「家に縛られて好きな人に縛られて。次第に人としての役割を忘れていくんだよ。…ただのお人形さんみたいに」
「何それ、意味分かんない」
「馬鹿だもんねぇ、お前」
そう言って笑った後、ふと安定が自分を振り返った。
「ねぇ」
そう思いません?と降り仰ぐ可愛らしい少年は。
どこか自分と同じ目をしていた。

黒留袖

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