君に伝えるI love you/安清編

その昔・・・自分たちが『存在』したその後の時代。
ある作家は西洋の愛の言葉を『月がキレイですね』と訳したという。
また違う作家はそれを『わたし、死んでもいいわ』と訳したという。

「そういえばお前の返答を聞いていなかったが」
 夕食での席で、珍しく向かいになった安定に
そういえばと再度問いかけた。
「あー…そうですね」
 んー、と少しだけ上を向き、安定は光忠と共に料理を運んでいた清光に「ねえ!」と声をかける。
「は?何、俺忙しいんだけど!」
「いいから、こっち」
 ほら、と座らせて安定は機嫌の悪い清光の手を取った。
 何?と首を傾げながら自分の隣に座る光忠に静かにと目線と指で合図をする。
「お前さ、いつも僕の言葉無視するけど、これ、本気の言葉だから」
「はあ?だから何…」
「さいごのさいごまで、お前に隣にいて欲しい」
「!!」
 安定の言葉に清光が目を見開く。
 最期の最後、それは戦場で命を終わらせるとき。
 その時まで一緒に居て欲しいとは、恐らく前からの願いなのだろう。
 置いて行かれる恐怖を知っているから。
 置いて行く絶望感を知っているから。

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