メリー メリー  エンド(へし燭SSS

「光忠」
からりと襖を開ける。
呼びかけても返事がないと思ったが何のことはない、彼はすやすやと寝息を立てていた。
畳んだ状態の布団に突っ伏しているところを見ると片付けようと思ってそのまま寝てしまったか。
そういえば「今日は天気がいいから布団を干したいんだ。手伝ってくれる?」と微笑んでいたのを思い出す。
取り込む時間までには帰ってこれたと思ったのだが・・・少し遅かったようだ。
すとんと隣に座る。
ふわふわとした黒い髪を撫でて長谷部は笑んだ。
己が選んだ結末はこれだった、と。
たゆたうように流れる時間を、ただ朽ちていくように。
「・・・ん、ぅ・・・?」
ふわりとその目が開いた。
ぼんやりとした金と・・・「藤」の眸が姿を見せる。
「・・・ぁ、帰ってた、の」
とろん、とした声で言う光忠に「ただいま」と笑いかけた。
「お帰り、長谷部君」
それに光忠もへしょりと笑って返す。
幸せだと思った。
「せっかく干したのにこの上で寝ては意味がないだろう」
「気持ちよくて、つい」
照れたように笑う彼に仕方がないなと小さく笑う。
「最近長谷部君良く笑うよね」
「そうか?」
「そう」
可愛らしく首を傾けながら言う光忠に「お前のお蔭だろうな」と言ってやった。
「え?」
「【人】というのは心底幸せでなければ笑う事は出来んらしい。俺が笑えているというのであればそれは光忠、お前のお蔭だ」
「長谷部君・・・」
「愛してる」
驚いた表情の光忠にそう囁けば彼は魔術にかかったようにうっとりと笑む。
「僕もだよ・・・長谷部君」
額を寄せ合ってくすくすと笑い。
そしてどちらともなく口付けをした。



(心の壊れた彼と


愛が壊れた自分と




辿る終幕は幸福か絶望か)

name
email
url
comment