共有/半分こ(へし燭SSS・ワンドロお題)

厨房に行くと珍しく光忠が大机の前に腰掛け、ぼんやりと宙を見つめていた。
「・・・燭台切」
「・・・。・・・え、あ、長谷部くん?!」
とん、と肩を叩くと驚いたように彼はこちらを見る。
「どうした。具合でも悪いのか?」
「ううん、何もないよ」
長谷部の問いににこりと笑い、光忠は取り繕う様にして立ち上がった。
「今何時?」
「3時だ」
「じゃあそろそろおやつの時間だね」
いいものがあるよ、と光忠が言う。
戸棚から出してきたのはこの前万事屋で購入した菓子だった。
「待ってね、お茶入れ・・・」
「待つのはお前だ」
笑って、長谷部から離れようとする彼を無理やり座らせる。
鍋でお湯を沸かし、彼がやるのと同じように珈琲を淹れた。
自分はそのまま、光忠には牛乳を入れて前に置く。
「あ、の・・・?」
「ほら」
「え?」
「半分だ」
先程光忠が出してきた菓子を半分にした。
彼はどうも無理をする衒いがある。
しかもそれを隠そうとするのだ。
嘘が下手なくせに。
少し顔を顰め、ぽかんとする彼に「俺にも寄越せ」と言ってやった。
「お前が何を無理しているかは知らん。が、お前が嫌なもの全てを背負い込む必要はないだろう」
「長谷部、くん」
「お前の辛さも、お前の背負っている物も全て、この菓子の様に半分に出来たらと、そう思うが?」
菓子を差し出しながら長谷部は言う。
驚いたように目を見開き、それからふわりと破顔した。
「そういうところ、ずるいよねえ」
「何がだ」
「うーうん、何も」
くすくす笑って、それを受け取る。
その腕をぐっと掴み、長谷部は光忠に笑いかけた。
え、という表情の彼に触れるだけの口付けを施す。




良い事は二人分



悪い事は半分


二人で共有しよう



(悪い事は全て背負い込んでしまうお前を




全て俺のモノにしたい、それは黒く淀んだ独占欲)

name
email
url
comment