節分/雪遊び(光忠♀ワンドロ・へし燭♀

今日は節分なのだと言う。
豆を投げ、鬼を祓い、春を呼ぶ行事だ。


「わあああ!!!燭台切さん、平気?!!」
「ちょ、大丈夫ですか?!!ほら、こっち・・・!」
「え、僕は大丈夫だよ・・・?」
「もーー女の子なんだから身体大事にしなきゃ!・・・あ、主!」
「馬鹿清光!主呼ぶなって長谷部さんから言われて・・・!!」
・・・表が五月蠅い。
そういえば雪が積もったのだと短刀や打刀たちが騒いでいた気がするのだが・・・なんだろう。
「あ、へし切!」
戸を開けるとぱたぱたと廊下を走って来た少女・・・加州清光と目が合った。
いつもその名で呼ぶなと言っているのにと文句を言おうと口を開いた瞬間、ぱん!!と顔の前で手を合わされる。
「・・・は?」
「ごめん!!」
「・・・なんだ?」
きょとんと彼女を見れば、えっとね、と口籠った。
「短刀とかと、雪合戦をしてたんだけど・・・たまたま通りがかった燭台切さんに当てちゃって」
「・・・?雪玉の中に石を入れていたわけでもあるまい?」
「入れてないけど。でも全身ぐしょぬれでさあ」
「は?」
清光の言葉に一瞬固まる。
そのまますぐ立ち上がった。
「どこだ」
「あ、えっと、主のとこ!!服着替えるって」
「そうか」
清光の慌てた声を背後に聞き、長谷部はその場所に向かって歩き出す。
まったく何を考えているのか。
「光忠ァ!」
「わっ?!あ、長谷部くん!」
ぱ!と顔を輝かせる・・・光忠。
「今日雪降ったじゃない?みんな大はしゃぎでさ。厄除け饅頭出来たよって呼びに行ったら雪玉に当たって・・・格好悪いよね」
にこにこと言う彼女に長谷部ははあと溜息を吐き出し、その肩を掴む。
「??何?」
「あのなあ・・・!!」
不思議そうな顔で長谷部を見る光忠に長谷部はもう一度息を吐き出した。
雪玉に当たるのは仕方のないこともあるだろう。
当てた方が悪いと思わないし避けられなかったのがいけないとも思わない。
だが。
「・・・その恰好は何だ」
長谷部は問う。
主が・・・裁縫を趣味としており何かと光忠を着せ替え人形にしたがるのは知っていた。
直談判を試みた際、「服を着替えなきゃならなくなったら構わんだろ?」と言う主に長谷部は何も言えなかったのである。
だからそういう事が無い様気を付けていたのに・・・だ。
「服が濡れたら俺の所に来いと言っただろう!」
「ええ?だって長谷部くんに迷惑はかけられないし」
「主の手をわずらわせる方が問題だろうが!」
怒鳴る長谷部にきょとんとしてからけらけらと笑う。
「もしかして嫉妬??ふふ、主はそうじゃないから大丈夫だよ」
「いや、そういう問題じゃ・・・」
綺麗な笑顔で微笑む光忠に何も言えなくなった。
幾度目かの溜息を吐き出す。
「・・・。・・・その恰好は?」
埒が明かないと質問を変えた。
「ああこれ?鬼だよ。格好いいだろう?」
にこと笑って、光忠は手を広げる。
大きな胸が揺れた。
黄色地に黒の縞模様の露出の多い服に身を包む光忠は格好良いと言うかなんというか。
短いそれから出るむっちりとした白い太腿や着ない方が良いのではと思う程肌蹴た胸元は目のやり場に困った。
「??長谷部くん?」
「着ておけ」
自分の上着を肩にかけてやる。
目を丸くした光忠は花が綻ぶ様な笑顔を見せた。
「ありがとう、長谷部くん」


節分は春を呼ぶ行事だ。

雪荒ぶ冬が早く過ぎ、春が訪れます様にと長谷部は祈った。



「鬼が巻き寿司食べるなんて変だよね」
「・・・その前に着替えてくれ、頼む」

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