絆/てのひらの熱(へし燭SSS・ワンドロお題)

その日、夢をみた。
昔々、光忠が織田時代に伊達へ行った時の夢。
・・・朧げながらだったと思ったのに。
「・・・っ!!」
黒い夢に飛び起きた。
冷汗が止まらない。
反射的に部屋を出て廊下を走った。
「みつ・・・ただ!」
彼の部屋を勢いよく開ける。
すぅすぅと静かな息で眠っている光忠がそこにはいて、漸くほっとした。
「・・・ん、ぅ?」
ふわりと金と紫の瞳が開く。
「・・・あれ?はせべ、くん・・・?」
不思議そうな表情で起き上がる光忠に「すまない」と謝った。
「お前の夢をみた。お前が居なくなってしまうかと思って・・・」
はあ、と息を吐くときょとんとした光忠がくすくす笑う。
「何故笑う」
「だって長谷部くんがそんな事言うなんて・・・」
軽く笑いながら光忠が首を傾げた。
「大丈夫。僕は何処にもいかないよ?」
静かに微笑む光忠。
触れようと思っても手が出せなくて、小さく彼の名を呼ぶ。
「光忠」
「え?」
「手」
手?と疑問符を浮かべる光忠の手をぐいっと引っ張り、自分の方に寄せた。
「わっ」
驚いた声を上げ、光忠が胸に飛び込んでくる。
「長谷部くん?」
見上げる光忠をぎゅっと抱きしめた。
「もう二度と離さない」
「・・・ふふ、言うねぇ」
くすくすと可愛らしく光忠が笑う。
「僕の手を離さないでくれる?」
「無論だ。もう約束は違わない」
不敵に笑い、白い手にそっと口付けた。




繋いだ手を離さないように。
もう二度と彼が遠くに行かぬように。
伝わる熱は見えない絆となって二人を強く結びつけた。



(それは確固たる信頼か、それとも相手を破滅させるほどの執着か)

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