名を呼ぶ/息を呑む(へし燭SSS・ワンドロお題)

「・・・聞いてる?」
彼の不満気な声にはっと我に返る。
「・・・え?」
「もう、やっぱり聞いてない!」
頬を膨らせた光忠が一度息を吐いてから、あのね、と続けた。
「倶利伽羅がさ、僕の事やらしいって言うんだよ」
「・・・はあ?」
珍しくすっとんきょうな声を上げる長谷部に、酷いと思わない?と言う光忠。
そういえばこの間大倶利伽羅が後ろから抱き付きながら何か言っていたっけか。
いやそれよりも。
「お前、浮気か」
「違うよ、なんでそうなるの!・・・倶利伽羅とはそういう事してない。僕を何だと思ってるのさ?」
むっとして迫る長谷部に光忠が再び頬を膨らませた。
「僕がそんな不誠実だと思うのかい、君は」
「いや、そういう事では」
「もういいよ」
逆に顔をずいと近づけられ狼狽えればはあと溜息を吐き光忠は踵を返す。
そのまますたすたと歩いていった。
「お、おい!!」
慌てて呼び止めるが彼は止まらない。
「待て、おい!!燭台切!!」
機動は長谷部の方が早いはずだが追いつけなかった。
「待てと言っている・・・光忠!!!」
彼の名を叫ぶ。
ふと止まった光忠がふわりと振り向いた。
「・・・っ」
思わず息を呑む。
日を背に背負った彼が・・・美しかったから。
「光、忠」
ゆっくり、名を呼ぶ。
美しい彼の名を。


「一回だけ、赦してあげる」
「・・・感謝しよう」
綺麗に笑う光忠に長谷部は敵わないな、と思う。
息を呑むほどに美しい彼には。
恐らく一生敵わない。


ーー
冒頭のくりみつもどきはリアル大倶利伽羅くん(高2男子)が長船先生(23歳男性)をあすなろ抱きしながら
大「こいつやらしーねん」
光「もう、何それww」
ってやり取りしてたっていう本日の実話です(むしろその話がしたかった)

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